2002 Fiscal Year Annual Research Report
ルネサンス君主のイメージ戦略―『ボルソ・デステの聖書』の図像学的研究
Project/Area Number |
14710031
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
京谷 啓徳 九州大学, 大学院・人文科学研究院, 助教授 (70322063)
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Keywords | 宮廷美術 / 君主称揚 / ボルソ・デステ / フェツラーラ / ルネサンス写本 |
Research Abstract |
平成14年度の研究実施計画に従い、順調に調査研究が遂行された。イタリアでの国外調査は別の資金によって行ったため、当初計上していた外国旅費は、国内調査のために国内旅費に代えた。イタリアではモーデナの市立エステンセ図書館、フェッラーラの市立アリオステア図書館等において資料調査を行い、また、当写本のファクシミリ版を所蔵する東京大学、印刷博物館等において、写本の詳細な調査および撮影作業を行った。 本年度は、『ボルソ・デステの聖書』に描かれたボルソのインプレーザ(個人的な標章)の意味、および本写本に描かれたボルソの美徳を表すモチーフに関しての検討を行った。まずボルソは、「パラドゥーロ」、「水流に角を刺す一角獣」、「竜の尾と翼を有するヒョウ」、「生垣」など、彼が行ったポー河の治水および周囲の湿地帯の干拓工事を直接的に想起させるようなモチーフを自分のインプレーザに採用することにより、市民に有益なる君主のイメージを普及させようとしていたと考えられることを明らかにした。同時に、本写本のテクストたる聖書とは無関係に、正義の義人像等、君主の美徳を表すモチーフを諸所に配することによっても、良き君主としてのイメージ宣伝を行っていることを指摘した。 これらの研究成果の一部は、エステンセ図書館蔵本ファクシミリ版『ボルソ・デステの聖書』日本版開設2(岩波書店、2002年)収載の論文、「良き君主ボルソ・デステー『ボルソ・デステの聖書』の機能と装飾」として発表した。
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Research Products
(1 results)