2003 Fiscal Year Annual Research Report
江戸時代絵画における風景描写に見られる大気表現の変遷
Project/Area Number |
14710033
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Research Institution | Mitsui Bunko |
Principal Investigator |
樋口 一貴 (財)三井文庫, 学芸研究室, 学芸員 (60281599)
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Keywords | 絵画 / 風景 / 大気 / 空間 / 写生 / 応挙 / 南蘋 |
Research Abstract |
古来日本絵画において大気の表現は、画家の空間を把握する認識のありかたが如実に示される部分である。室町時代以来わが国の水墨画に多大な影響を与え続けてきた中国・南宋時代の画家牧谿や玉澗の大気表現は、薄墨を滲ませるように用いたものであった。一方着色画においては、狩野・土佐・長谷川派などが金泥や金箔で雲あるいは霞をあらわしており、平面的で概念的・装飾的印象を与える。空の色が今日我々がイメージするところの青色であらわされるのは、18世紀後半までまたねばならず、19世紀になって葛飾北斎筆『富嶽三十六景』シリーズの目にも鮮やかな青い空が巷間を席巻したのは日本絵画の空間表現における一大革命といえる。 本研究では以上のように江戸時代における大気表現が装飾的なものから青い空へと変遷する過程を考察するものである。平成15年度は、円山応挙および、円山派・四条派の絵画作品を中心に内外所蔵機関のもとで調査を行った。これは、14年度に大英博物館にて調査した円山応挙の花鳥画の中に中国清時代の画家・沈南蘋の影響を強く受けたものが見出されたことによるものである。この影響関係は、当該研究においてきわめて重要な点となるものである。群馬県立美術館所蔵の応挙筆「青鸚哥図」はかねてより知られる南蘋風の花鳥画がであるが、今年度行った精査によりその空間表現に青い空を確認した。なお、本図は大徳寺狐蓬庵に伝来したとの伝承があるが、これが事実として確認されれば、従来未知であった応挙と同寺の関係を示す資料となることも興味深い。
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