2002 Fiscal Year Annual Research Report
幼児期の他者理解をうながす要因についての検討:親子関係から仲間関係へ
Project/Area Number |
14710064
|
Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
園田 菜摘 山形大学, 教育学部, 講師 (00332544)
|
Keywords | 感情推論 / 嫌悪 / 共感性 / 親子関係 / 幼児期 |
Research Abstract |
本研究では、幼児期の他者理解をうながす要因の一つとして、母親を取り上げて検討を行った。調査対象は、幼稚園に在園する幼児77名(男児37名、女児40名;年少児21名、年中児33名、年長児23名)およびその母親70名である。まず、子どもの他者理解能力を調べるため、岩立(1993)と小嶋(2001)を参考に、主人公が『喜び』『悲しみ』『怒り』『嫌悪』の感情をどれくらい強く感じているかを推論させる「感情推論」の測定を行った。また、質問紙により、母親自身の「感情認知」、「共感性」、「養育態度」を測定した。「感情認知」については、坂上・菅沼(2001)を参考に、『喜び』『悲しみ』『怒り』『恐れ』それぞれの感情を、母親がどれくらい敏感に覚知するかについて評定してもらった。「共感性」については、Mehrabian & Epstein (1972)の『感情的暖かさ』『感情的冷淡さ』『感情的被影響性』の3つの尺度を用いた。「養育態度」については、渡辺・広利・松本(1993)を参考に、23項目を5段階で評定してもらい、因子分析(主因子法:バリマックス回転)の結果、第1因子を『否定的養育態度』(α=.68)、第2因子を『不安的養育態度』(α=.66)、第3因子を『非一貫的養育態度』(α=.60)、第4因子を『ステレオタイプ的養育態度』と命名した。 相関分析を行った結果、年中児の『嫌悪』の感情推論において、複数の変数との相関がみられた。そこで、年中児の『嫌悪』の感情推論を従属変数、相関がみられた複数の変数を独立変数として重回帰分析を行った結果、母親の「共感性」の中の『感情的冷淡さ』の尺度との有意な関連がみられ、人に対して冷淡な共感を行う母親を持つ年中児は、他者の嫌悪の感情を強く推論することが示された(F=7.04, p<.01)。このことから、幼児が他者の嫌悪をどれくらい強く推論するかという感情推論能力については、特に嫌悪の感情を理解し始める5歳頃において、母親の共感性の影響を受けることが示唆された。
|