2003 Fiscal Year Annual Research Report
協同学習における対人的相互作用過程に及ぼす社会的目標の効果
Project/Area Number |
14710076
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Research Institution | Mie University |
Principal Investigator |
中谷 素之 三重大学, 教育学部, 助教授 (60303575)
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Keywords | 協同学習 / 社会的責任目標 / 対人的相互作用 / 学習動機づけ / 学級適応 / 縦断研究 / 児童 |
Research Abstract |
教室における学習において、子どもが友人と積極的に関わり、相互に援助を提供しあう協同の過程は、子どもの学業達成はもちろん、より幅広い学級への適応のためにも非常に重要な意味をもつ。そして最近の動機づけ研究で注目されている社会的目標(Social Goal)の概念は、このような学業と対人関係という、相互に深い関わりをもつにも関わらずこれまで各々独立して考えられてきた2つの適応の側面を結びつける有意義な観点である。本研究は、このような社会的目標の観点から、協同学習における児童の対人的相互作用と学業達成の相互作用のメカニズムを検討することを目的とする。 1.協同学習における相互作用過程に影響を及ぼす要因に関する縦断的研究 教室場面では、実際の学習は時々刻々変化する社会的な文脈のなかで実践されている。そのため現実の教室における協同学習についてよりよく理解するには、同一のクラスを対象とした縦断的研究を行い、その変化について検討する必要がある。そこで平成15年度の研究では、理科において協同学習を取り入れている小学校の5年生232名を対象に、学年始め(4月)と学年末(翌年2月)との繰返し測定によって、協同学習に及ぼす社会的目標の効果について時系列的に検討した。児童の社会的責任目標(規範遵守目標および向社会的目標)と認知的共感性が、理科への動機づけおよび多面的な学級適応にどのような影響を及ぼしているかについて検討を行った。 その結果、社会的責任目標(規範遵守目標・向社会的目標)、共感性を高くもつ児童は、1年間の協同学習実践を経た後の理科への学習動機づけ、および学級適応の各得点がより高いことが見出された。これより、協同学習をより効果的なものにするために、児童の社会的目標などの社会的要因を考慮することの重要性が示唆された。しかし、学年始めと協同学習を実施した後の学年末での規範遵守目標、学級適応感(教師・学校・勉強)、理科への動機づけの各得点自体は有意に低下していた。すなわち、単に協同を行えばよいのではなく、それをどのように実践するかにより、その効果には差異があることが見出された。
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