Research Abstract |
本研究では,Loevingerの提唱した自我発達理論に基づき,日本の青年期における発達傾向を検討した。小学校5年生から高校3年生男女799名を対象とし,ワシントン大学文章完成テスト(WUSCT)を実施した。その結果,個人の総合評定(TPR)において,衝動的段階(E2),自己保護的段階(E3),自己保護同調的段階(Delta/3),同調的段階(E4),自己意識的段階(E5)が見られ,学年が上昇するごとに,自我発達水準の高い者の割合が増加した。また,同学年の男女を比較すると,中学生以上で女子の方が自我発達段階の高い者の割合が多く,自己意識的段階(E5)については,女子では中学2年生から存在するのに対して,男子では高校1年生まで見られなかった。これらの結果について,36項目の合計得点(ISS)で検討しても,同様の結果が得られた。以上のことから,日本においても,青年期において自我発達段階の上昇が見られ,性差の存在が明らかにされた。この結果を欧米で行われてきた同年齢の自我発達水準の様相と比較すると,本研究の自我発達水準は低い傾向があった。このことについては,次年度以降検討を重ねたい。 また,上記の高校生まで見られた自我発達の様相が,その上の年齢層においてどのような変化を示すのかについて,専門学校1年生,2年生,看護学校生,大学生の傾向を比較した。男子では,専門学校1・2年生に比べて,大学生ではE4以下の占める割合が低く,E5以上の占める割合が高い傾向が見られた。女子では,どの群において,自己意識的水準(E5)以上の占める割合が非常に高く,似た分布をしているといえるが,専門学校1年生において自己保護的水準(E3)の者の割合が若干高かった。また,大学生においては,年齢の上昇に伴って,男女差が小さくなる傾向があるのに対して,専門学校生では男女差が縮まらなかった。以上のことから,所属する文脈によって,男女の自我発達水準の様相は異なる傾向が示唆された。
|