2002 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
14710107
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Research Institution | Konan Women's University |
Principal Investigator |
森 津太子 甲南女子大学, 人間科学部, 講師 (30340912)
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Keywords | 処理の流暢性 / 誤帰属 / 潜在記憶 / 社会的認知 |
Research Abstract |
本研究は、認知的・社会的判断に「処理の流暢性の誤帰属」というプロセスが関わっているという仮説を通して、社会的認知における「意識」の役割を検討するものである。「処理の流暢性の誤帰属」という仮説は、従来、単純接触効果、対人認知の文脈効果、有名性効果といった領域において検討されることが多かったことから、本年度は当初、そうした実験を通して、仮説の再検証とそのプロセスの詳細を検討する予定であった。しかし、文献を精査する中で、その前段階として、「処理の流暢性の誤帰属」仮説が、より幅広い領域の問題に有効であることを示す必要性を感じた。そこで、本年度はまず「幼児期の記憶と幸福度の判断」という、これまでにほとんど検討されていないより現実的な判断課題を用いて、仮説の一般化可能性を検討する実験を行った。 実験では、大学生50名に対し、半数の者には自分が5〜10歳の時の出来事を4個、残りの半数の者には12個を想起させた。その結果、「処理の流暢性の誤帰属」仮説を支持する方向の結果が見られた。すなわち、実際には幼児期の出来事を数多く思い出している参加者の方が、少ししか思い出していない参加者より、幼児期のことを覚えていないという一見逆説的な判断をし、また、幼児期は幸せな時期ではなかったという回答をした。これは、幼児期の出来事を想起する際に経験した「主観的困難さ(処理の非流暢性)」が、記憶の乏しさや不幸さに誤帰属されたことによると考えられる。こうした結果が、自身の内面的変化に目を向けやすい「私的自己意識」の高い参加者に顕著であったこともその傍証である(日本社会心理学会第43回大会にて研究発表)。 このように、「処理の流暢性の誤帰属」という仮説が、幅広い認知的・社会的判断の説明に有効であることが示されたことから、今後は当初の計画通りプロセスの検討に移行する予定であり、現在、実験の準備中である。
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