2002 Fiscal Year Annual Research Report
組織要因・集団要因・個人要因が産業事故発生に及ぼす影響に関する包括的検討
Project/Area Number |
14710115
|
Research Institution | The Institute for Science of Labour |
Principal Investigator |
菅沼 崇 財団法人労働科学研究所, 研究部, 研究員 (60311271)
|
Keywords | 産業事故 / 組織事故モデル / 組織要因 / 集団要因 / 個人要因 / リスク |
Research Abstract |
【目的】菅沼等(2002)は、従来の"組織要因が寄与する産業事故"についての理論的枠組みを統合・発展させ,般理論を志向した包括的な産業事故発生モデル"組織事故モデル"を開発した。本モデルは,産業事故発生に至るまでのブロセスを"リスク事象の発生ブロセス"と"リスク事象の潜伏・強化ブロセス"の2段階に区別して捉えるものであり,これら両プロセスには組織要因(24要因)、集団要因(6要因)、個人要因(7要因)が影響を及ぼしうることを示している。本研究(3カ年)では、当該モデルの妥当性を多角的に検証するとともに、当該モデルを援用した具体的な安全管理施策(評価尺度の開発を含む)についての提言を行うことを目的とする。 【実績】平成14年度は、「既存研究のレビュー」および「東京電力問題事例の分析(今年度に発覚した組織問題に関する最新事例であるため、研究計画を一部変更して含めた)」を通して、モデルの妥当性検証を行った。 第1に、既存研究のレビューでは、29文献にて見出された事故発生要因を包括的に抽出し、それらを整理・体系化した。その結果、モデルに含まれるすべての要因の妥当性が検証されると共に、4つの新たな要因(組織間関係、組織構造、組織風土、標準・基準)を含めることの必要性が示唆された。 第2に、東京電力問題事例の分析では、まず、数社の新聞記事、原子力安全・保安院の報告書、および電力会社の報告書を対象として資料分析を実施し、時系列事象の整理を行った。その後、モデルを用いて当該事象のプロセス分析を行った。その結果、a)無届けにて許認可を得ていない新工法工事を行うとの集団意志決定がなされ、その決定内容が上級管理者に報告されることなく実施された(リスク事象の潜伏ブロセス)、b)この種の不正は成功経験に基づいて繰り返されることで強化され、その後、上級管理者がそれをオーソライズした(リスク事象の強化ブロセス)、c)本社・発電所レベルプロセス→保修部レベルプロセス→本社・発電所レベルプロセスという階層間の相互影響プロセスが存在した(リスク事象の潜伏・強化プロセスの階層性)など、モデルに合致するいくつかの特徴が見出された。なお、分析過程において、「組織レベルの規範」や「集団レベルの学習」など新たな要因の存在が確認されたため、これら諸要因を当該モデルに追加的に含めることとした。
|
Research Products
(1 results)