2003 Fiscal Year Annual Research Report
吃音者によるセルフヘルプ・グループにおける参加者の自己変容
Project/Area Number |
14710125
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
伊藤 智樹 富山大学, 人文学部, 助教授 (80312924)
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Keywords | セルフヘルプ・グループ / 吃音 / 物語 / 自己 / 自己物語 |
Research Abstract |
昨年度に引き続く調査の進展により、フィールドノーツの蓄積が進み、7件のインタヴュー(うち1件は電子メール)が行われた。 本研究が採る物語自己論の観点からは、セルフヘルプ・グループとしての言友会を、参加者による自己物語形成の場としてとらえる。吃音者の苦悩は、さまざまな生活場面で自分はスムーズな相互行為を行っていけるのかという自己の問題に関わっており、彼・彼女たちは、それぞれに現在の自分を評価し、未来を見ようとする(これが物語の「筋」にあたる)。この際、吃音者にとって生きがたいのは(吃音がなくなるという意味での)回復の物語である。なぜなら、現在の言語療法では吃音がなくなるという筋を吃音者に提供することはできないからだ。 このように考えると、セルフヘルプ・グループの特質は、回復によらない筋の物語を提供する点に求められるだろう。これに関して、本研究のデータからは、「苦境」「前進的」「改善」「受容」「開示」「参加による癒し」という諸要素をピックアップしている。セルフヘルプ・グループは、これら複数の物語が交わされる場になっている。それらは、単一の物語ではない。 今後は、これらの分析を進める段階に入るが、データを補充するための調査は従来と同様に行ってゆくため、予算は主に旅費や機材の補充などに充てられることになる。
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Research Products
(1 results)