2002 Fiscal Year Annual Research Report
高齢社会における市民的協同の展開と地域社会の再構築に関する研究
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14710135
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Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
中西 典子 愛媛大学, 教育学部, 助教授 (90284380)
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Keywords | 地域社会 / 非営利・協同セクター / 住民参加型地域包括システム / 高齢社会 / 伝統的地域住民組織 / 医療生活協同組合 / 市民参加型福祉社会 |
Research Abstract |
本年度の研究においては、高齢化のなかで地域社会の新たな再生を担っていく主体的条件を探求するにあたり、前提的な作業として、とりわけ「参加型福祉社会」がめざされる政策的背景を把握し、参加型社会システムのもとでの非営利・協同セクターの位置づけについて、先行文献・資料および予備的踏査を通じて考察を進めた。これにより明らかとなった点を以下に簡単に記す。福祉分野は、これまでも、民生委員や社会福祉協議会の地域的配置など、地域と行政とのつながりは深いものがあったが、社会福祉基礎構造改革による「利用制度」や「介護保険」の導入により、福祉が地域の全住民に関わる問題として認知されるとともに、各市町村でも「住民参加型地域包括システム」が実施され始めている。この場合、高齢社会の下で、とりわけ介護問題は国民全てに関わるという点からしても、従来、伝統的地域住民組織がそなえていた網の目的な包括性が、有効となっている。一方、介護保険指定事業者となった非営利・協同組織は、事業体としての性格と運動体としての性格との間で、葛藤や矛盾を抱えてきている。筆者が調査したえひめ医療生活協同組合の経験によると、採算という事業運営の方向へ関心がシフトしていくなかで、事業の効率を追求するだけでなく、生活協同組合の理念である地域という原点に立ち返ることの必要性が模索されており、これはかなり示唆的なものとなる。従って、地域という空間的基盤の上に、非営利・協同セクターなどの多様な諸主体が・その組織的理念や専門性を維持しつつ、いかに開放的、啓発的な形で関わっていくのかという点が問われることとなる。以上の考察と同時に、わが国における市民参加型福祉社会システムの今後を展望する際に、ボランタリーな目的意識的市民組織活動の地域的展開において先進的な蓄積のある英国にて、高齢者福祉施設の見学およびボランタリセクターの担い手への聞き取り等を行ったことを加えておきたい。
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Research Products
(1 results)