2003 Fiscal Year Annual Research Report
不平等構造と民主制度の関連性についての計量社会学的研究
Project/Area Number |
14710138
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
高田 洋 東京都立大学, 人文学部・社会福祉学科, 助手 (30325998)
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Keywords | 不平等 / 民主主義 / 社会階層 / 計量分析 / 経済発展 / 時系列分析 |
Research Abstract |
国際的なデータに基づいた不平等構造と、民主化の程度との関連を研究するために、次の事項について研究を行った。 (1)世界各国の民主主義の指標の収集 民主主義は、制度的または政治方法的に定義される。この民主主義は、さらに、政治的自由と選挙の参加の程度の2つの下位指標によって測定される。フリーダムハウスの自由レイティングは、市民的自由と政治的権利のふたつの尺度で、国ごとの民主主義の程度を1972年から格付けしている指標である。 (2)計量分析方法についての研究 国際的なマクロデータを分析するために、時系列分析の手法について研究を行った。ARIMAモデルと交差相関の分析方法についての理論的研究と、ソフトウェアにおける実行方法について研究を行った。この分析方法は、多変量の時系列データの予測とそれらの関係を解明するための有効な手法である。 (3)民主化の端緒期の国々における民主化の安定性についての研究 (1)と(2)の研究で得られたデータと手法を用いて、民主化の端緒期にある国々についての分析を行った。民主主義の安定のためには経済発展が不可欠であるので、その関係に特に重きをおいて分析を行った。ハンチントンの『第3の波』は、1991年当時の民主化の始まりの国々についての分析であったが、その後の変遷を分析した。時系列分析の手法を用いて、経済発展と民主主義の関係を検証すると、その関係は同時的な正の影響であり、民主主義の安定のためには、ある水準以上の経済発展が必要であることが明らかとなった。そうでない場合、民主体制は不安定になる。また、経済発展はその水準により、民主主義との関係を強めたり弱めたりする。その関係は逆U型になっており、経済発展の初期の段階では、その関係は弱いままである。発展の初期段階における民主化の戦略は慎重であるべきである。
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