2003 Fiscal Year Annual Research Report
欧州社会モデル下のEU高齢者雇用政策と関連社会保障改革
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14710150
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Research Institution | Niigata Seiryou University |
Principal Investigator |
引馬 知子 新潟青陵大学, 看護福祉心理学部, 講師 (00267311)
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Keywords | 高齢者 / EU / 中高年者 / 雇用 / 社会保障 / 社会保護 / 社会福祉 / 欧州社会モデル |
Research Abstract |
本年度は、EUが1990年代に入り掲げる"すべての人のためのヨーロッパ"づくりの政策提言のひとつに位置づけられる、高齢者(中高年者)に対する「雇用」における具体的な政策をまず明らかにした。特に、活力ある加齢を目指す政策提言と、その後の施策展開に大きな影響を与える「リスボン戦略」の内容を考察した。EUの中高年者の雇用については、EUの中高年労働者の現状と指針(ガイドライン)、中高年雇用に関わるEU市民に対する調査(ユーロバロメーター)についても検討を加えた。一方、EUおよび加盟国の高齢化と社会保護・社会保障政策の現状についても、その動向を追うこととした。 これらの検討から明らかになったことは、EUは意識的に就労と退職後の法施策の双方を関連付ける政策を打ち出しており、これを踏まえた実際の取り組みの成果が見え始めていることである。具体的には、高齢者の早期退職の奨励を止め、中高年の雇用率や退職年齢を引き上げ(EU全体で雇用率を38.5%から50%に、退職年齢を64.9歳へ)、あわせて高齢者への機会均等政策の実施(生涯学習、職業訓練、差別禁止、相談援助、情報ネットワーク作り等)を進めている。また、これに沿った形で税と給付および年金制度の改革等が取り組まれている。これらEUレベルの改革が、加盟国の具体的政策とどのように係わり合い、加盟国では実際どのような政策が進められているのかについても、特徴のある政策を行っている加盟国を中心に、現状の整理を行った。近年、これら政策実施の評価も出され始めており、同様な高齢社会にある日本にも大きな示唆を与えるものとなっている。次年度は、これらの具体的政策について、より明らかにしていく予定である。
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