2002 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
14710164
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Research Institution | Hokusei Gakuen University Junior College |
Principal Investigator |
水川 喜文 北星学園大学短期大学部, 助教授 (20299738)
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Keywords | 会話分析 / エスノメソドロジー / Harvey Sacks / TCU(Turn Construction Unit) / カテゴリー化 / MCD(メンバーシップカテゴリー化装置) / Emannuel A.Schegloff / Harold Garfinkel |
Research Abstract |
本研究は、エスノメソドロジーに基づく会話分析の発想を、H.SacksやH.Garfinkelらにさかのぼり言語哲学など隣接領域との接点を見いだし、理論的に深化させるとともに、C.Goodwinらが押し進めた具体的フィールドにおけるビデオデータの詳細な分析の技法を方法論的・系統的に洗練させることを目的としている。 本年度は、理論研究の一端として日本社会学会大会において「会話分析の社会言語学的展開と社会秩序のカテゴリー:E.A.SchegloffとH.Sacks」というタイトルで発表を行った。この発表では近年の会話分析(CA)の展開を3つの流れにまとめ、その中でも中心的なE.A.Schegloffらの影響を受けた方法論(いわゆるpure CA/純粋会話分析)を検討した。本研究ではE.A.Schegloffの方法論を、TCU(Turn Construction Unit)という語用論上の単位に基づく「もう一つの文法」を解明する研究と位置づけることにより、機能言語学と社会学における会話分析の意義の差異を明確化できることを指摘した。また、これにより、pure CAを、TCUを分析装置として相互行為のシークエンスを記述する一つの「科学」と位置づけることが可能になった。同時に、TCUが発見可能になる相互行為を秩序あるものとして見ていくために、pure CAとH.Sacksのカテゴリー化やMCDに関する議論との関係を明らかにするという課題も生まれてきた。これらは、コペンハーゲンで行われた国際会話分析学会(International Institute for Conversation Analysis, Conference)に参加し、言語学・語用論研究者と情報交換を行うことで生まれてきた知見でもある。 また、理論研究を支えるものとしてマンチェスター大学のW.Scharrock教授から譲り受けたH.Sacks、H.Garfinkelの未刊行資料をデジタル・アーカイブ(電子資料)として再編集する作業を行っている。このことで日本国内および国外のエスノメソドロジー・会話分析研究者へ基礎資料提供が可能になる。さらに、これらの基礎研究と並行して具体的な場面の会話分析を行うビデオデータの収集および分析も継続している。今年度はこれまで行ってきた身体障害者の介助・介助教育場面に加えて、交通事故で脳外傷を受けた人などが通所する高次脳機能障害者作業所をフィールドとしてビデオデータの収集を行った。これらのフィールドワーク、データ収集により今後の応用研究の展開が可能となると考えられる。
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