2002 Fiscal Year Annual Research Report
ドイツ環境教育における「持続可能な開発のための教育」に関する研究
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14710186
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Research Institution | Shimane University |
Principal Investigator |
井上 静香 島根大学, 教育学部, 講師 (10325037)
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Keywords | ドイツ / 環境教育 / 持続可能な開発 |
Research Abstract |
本年度は、ドイツにおける「持続可能な開発のための教育」について、その思想的・理論的解明を行った。 思想上の解明に際しては、1960年代後半から西欧に族生したエコロジー運動を中心とした「新しい社会運動」に注目した。この運動と、今日のドイツ環境教育のあいだには、重要な思想的な連関がある。1980年代エコロジー運動の影響下で出現した「エコ教育学」の主唱者デ・ハーン(de Haan, Gerhard)は、今日ドイツ環境教育学会長を務めるなど、ドイツ環境教育政策(「持続可能な開発のための教育」)に大きな影響力を持っている。今日の「持続可能な開発のための教育」に関する諸議論の分析からは、そこには自然環境の破壊・汚染等を社会的・経済的・文化的側面から問題化し、現在の社会システムの在り方そのものを変革しようという関心が確認された。また、こうした特徴は、自然環境問題を自然に対する支配的な人間の認識、さらにそれに規定される自然支配的な社会の在り方を変えようという指向性を備えるかつてのドイツにおけるエコロジー運動に由来することを明らかにした。 理論的な解明としては、ドイツ環境教育における「持続可能な開発」ないしは「持続可能性」に関する議論を整理し、その理論的特徴を考察した。そこでは、「環境的正義」や「新たな公共領域の創出」をキーワードとして、学校教育を足がかりとした社会変革の可能性が論じられ、さらにそうした変革後の社会に適当な教育の在り方も同時に構想されていた。
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