2002 Fiscal Year Annual Research Report
東アフリカ・マー語系社会における物質文化と商品経済の変遷に関する人類学的研究
Project/Area Number |
14710220
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Research Institution | University of Shizuoka |
Principal Investigator |
湖中 真哉 静岡県立大学, 国際関係学部, 助手 (30275101)
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Keywords | ケニア / サンブル / 物質文化 / 商品経済 / 廃物利用 / 世帯経済 / 野生動植物利用 / 比喩的思考 |
Research Abstract |
本研究は、マー語系に属するケニア中北部の牧畜民サンブルをおもな対象として、物質文化と商品経済の相互関係、およびその歴史的変遷を、彼らの思考様式の側から捉えることを目指す人類学的研究である。平成14年度は、年度前半に関連文献の購読を行い、年度後半の12月30日から3月28日にかけて、ケニアに海外出張し、サンブルを対象とした調査研究を実施することが出来た。 本年度の調査研究においては、ロロキ郡の特定の世帯を対象として世帯経済の調査を行い、家畜および現金の収支に関する資料を収集することが出来た。また、ロロキ郡、バラゴイ郡、ワンバ郡において選択した各一世帯を対象として、その世帯が保有している物品の全品目(伝統的な民具と購入された工業製品の両方を含む)を共通項目のもとに調査する物質文化の広域サーヴェイを実施した。 研究の結果、解明できたおもな事項は以下の4点である。1.現在、サンブルが保有している物品は、サンブル自作の民具、鍛冶師による鋳造品、工業製品の三つに大別できるが、日常的には、これら各種の物品が組み合わさりながら併用されている。2.サンブルの廃物利用は、彼らの物質文化の極めて大きな部分を占めており、道端や廃屋で偶然拾った物品を、別の用途に読みかえて使用する行為が、既に慣習化している。3.サンブルの商品購入は、旱魃の時期にかなり集中しており、経済的には最も貧窮化する時期に消費行動が活発化している。4.近年、物品の修理をめぐる新しい民俗技術が開発されており、職業的な修理師が各地で活躍している。 これらの成果から、サンブルの物質文化は、新入の商品を、在来の物質文化体系との類比によって把握し、既存の生活枠組みのなかに編入していく点に特徴があることが解明できた。来年度は、とくに廃物利用と修理技術に重点化した調査研究を実施して、動態的物質文化論を構築したいと考えている。
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[Publications] 湖中 真哉: "グローバル・コモンズとしての民俗誌的情報:オンライン民俗誌の実践から"静岡県立大学国際関係学部編『国際関係学双書 19 グローバルとローカル』. 19. 101-155 (2002)
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[Publications] 湖中 真哉: "家畜をみる眼差しで自然と人間をみる"季刊リラティオ. 13. 90-95 (2002)
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[Publications] 湖中 真哉: "生業牧畜と市場経済を結ぶ地域ネットワーク-ケニア中北部サンブルの家畜商の事例 佐藤俊編『講座生態人類学 4 遊牧民の世界"京都大学学術出版会. 175-222 (2002)