2003 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
14710238
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
中島 圭一 慶應義塾大学, 文学部, 助教授 (50251476)
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Keywords | 中世 / 日本 / 貨幣 / 銭貨 / 金貨 / 銀貨 |
Research Abstract |
まず、近世貨幣成立の前提となる、金・銀の貨幣的使用の開始については、昨年度の調査・研究の成果に基づいて、論文「京都における『銀貨』の成立」をまとめ、発表した。 そして本年度は、中世貨幣解体の局面に重点を置いて、文献ならびに考古資料の収集と関係地域の現地調査を行った。 肥後南部の大名相良氏は、中世貨幣システムの動揺の指標となる撰銭令の発令が明応2年(1493)という早い段階で見られ、しかも関係史料が豊富である。そこで、その家伝文書(慶応義塾所蔵「相良家文書」)の分析を進め、また相良氏が本拠とした熊本県人吉市に出張し、相良氏の菩提寺願成寺の所蔵文書などの関係文書、及び関係する遺跡の現地調査を実施した。 この相良氏の事例のように、現在遺されている撰銭令の多くは幕府や大名などの公権力の発令にかかるが、和泉国入山田村(大阪府泉佐野市)が永正元年(1504)に定めたものは、被支配者たる村落も撰銭に関する基準を制定していたことを示す、珍しい実例である。しかも、入山田が所在する和泉国の守護所が置かれた堺(大阪府堺市)では、16世紀後半に私鋳銭の本格的な生産を行っていた遺跡が数ケ所見つかっている。このように和泉国は中世末期の銭貨流通を考える上で重要な地域なので、2度にわたって関係遺跡の現地調査を行い、また中世堺の宗教的中心であった開口神社の所蔵文書(大阪歴史博物館寄託)を閲覧・調査した。あわせて、隣国河内の出土銭貨や、堺と関わりの深い大名三好氏の拠点であった阿波国勝瑞館(徳島県藍住町)の出土銭貨についても、実見・調査を行った。
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Research Products
(1 results)