2002 Fiscal Year Annual Research Report
日本列島とヨーロッパにおける農耕社会化のプロセスに関する比較研究
Project/Area Number |
14710272
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
松本 直子 岡山大学, 文学部, 助教授 (30314660)
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Keywords | 農耕 / 新石器 / 比較考古学 / 瓜生田遺跡 / ヨーロッパ / イデオロギー |
Research Abstract |
1 ヨーロッパ各地(南西ヨーロッパ、中央ヨーロッパ、ブリテン島、スカンジナビア)の中石器時代から新石器時代に関する論文・資料を収集し、各地の状況について整理した。実際の考古学的資料の内容と、研究の理論的枠組みとを分けて検討したところ、次のようなことが分かった。 考古学的資料について:縄文文化の内容は、定住性の高さ、狩猟採集活動、土器や土偶の大量消費などの点で南西ヨーロッパの中石器時代から新石器時代にかけての様相と類似点が多い。また、スカンジナビアの中石器時代から新石器時代にかけての状況とも共通性をもつ。 理論的枠組みについて:近年の研究の進展に基づいて、ヨーロッパ各地では従来の経済中心的な枠組みの再検討が進んでいる。中東における農耕の発生も含めて、経済的要因が先行するのではなく、初期段階からイデオロギーや世界観などの心理的要因が深く関与しているという認識が高まっている。 以上のことから、日本列島における農耕社会化のプロセスをより深く理解するためには、縄文文化の特異性を強調するのではなく、普遍的な要因と特殊な歴史的コンテクストの双方に注目し、社会的・心理的要因をより重視して分析を進めていくことが必要であることが確認された。 2 熊本県人吉市のアンモン山遺跡と瓜生田遺跡の発掘調査を行い、縄文時代後期末ごろとみられる住居跡を検出した。住居埋土から採取した炭化物の放射性炭素年代測定を行い、3050±50BPという結果を得ることができた。さらに、植物珪酸体分析の結果、縄文時代後晩期の包含層および住居跡埋土上層からイネとムギ属の珪酸体が検出された。これはこの時期の生業を復元する上で重要な成果であるが、上層からの混入の可能性があるため、来年度さらに検討を進める必要がある。
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