2004 Fiscal Year Annual Research Report
日本列島とヨーロッパにおける農耕社会化のプロセスに関する比較研究
Project/Area Number |
14710272
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
松本 直子 岡山大学, 文化科学研究科, 助教授 (30314660)
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Keywords | 農耕 / 新石器 / 比較考古学 / 瓜生田遺跡 / ヨーロッパ / イデオロギー / 定住度 / モニュメント |
Research Abstract |
1 ヨーロッパ新石器時代の様相と縄文文化の様相についての総合的比較検討のため、次のような研究を実施し、それぞれについて暫定的な結果が得られた。 ・縄文文化の環状列石とブリテン島のモニュメントについて比較検討を行った。その結果として、定住度とモニュメント築造との関係について共通する側面があることを推定した。 ・ヨーロッパ新石器時代の遺跡についてのデータベースを作成し、年代や地域的な動向についての情報を整理した。その結果、現在までに得られている放射性炭素年代に基づく新石器文化の動態を把握することができた。また、定住度や農耕・牧畜への依存度、新石器化のプロセスにおける地域的・時期的多様性を確認した。 ・総合的検討の結果、ヨーロッパ新石器文化と縄文文化の間には、農耕社会化というプロセスにおいて共通する点が認められた。とくに、南東ヨーロッパの初期新石器文化と前期・中期の関東・東北地方の縄文文化とは、定住度の高さと物質文化のあり方に共通性が高い。しかし、農耕への依存度や牧畜の存在などの要因による差異もあり、文化総体を単位とする比較ではなく、諸要素間の関係性のあり方に焦点をあてた比較研究が、文化変化の研究を促進するうえで必要であることを確認した。 2 熊本県人吉市の瓜生田遺跡の発掘調査成果についての整理・検討を行い、次のような成果を得た。 ・九州における縄文時代後期後半から弥生時代前期にかけての遺跡動態を検討した結果、人吉地域は、後期末から晩期前半にかけて集落遺跡が増加した熊本県北部と、晩期後半(黒川式期)に遺跡数が増加するが住居跡がほとんどみられない南九州地域との中間に位置している。瓜生田遺跡と周辺の当該期遺跡の動向から、人吉地域の集団は、生活様式においても両地域の中間的な様相を示すといえる。 ・九州においても、縄文時代後期から晩期にかけて、定住度は地域によってかなり変動していることが推測された。今後、定住度の変化と生業の関係についてさらに研究を進める必要がある。 ・瓜生田遺跡の発掘調査概報を作成した。
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Research Products
(3 results)