「読経道」の研究-法華経読誦の芸道化に関する総合的研究-

2003 Fiscal Year Annual Research Report

• Project/Area Number: 14710301
• Research Institution: Chiba University
• Principal Investigator: 柴 佳世乃 千葉大学, 文学部, 助教授 (60235562)
• Keywords: 読経 / 芸道 / 芸能 / 寺院 / 学問 / 説話 / 字音 / 系譜

Research Abstract

芸道としての法華経読誦、すなわち「読経道」がいかなる体系を持ち、どのように芸道化していったかを明らかにするために、今年度は、読経道を専門に論じた著書の刊行と、3編の論文の公表を行った。
『読経道の研究』(単著、風間書房刊)は、本研究の指標となるものである。本書は、論文編(<「読経道」考><書写山と読経道><能読の道命阿闍梨><明覚流の法華経読誦>の4部から構成される)と、資料編(三千院円融蔵『読経口伝明鏡集』、薬師寺蔵『法華声口伝』、但馬温泉寺蔵『法華経音曲』、法明院蔵『法華秘中略歎抄』の4本を収める)から成り、全体で読経道の実体解明を目指したものである。本書は、読経道の基礎的研究をなすもので、資料紹介とその分析により、読経道を巨視的微視的に論じ、見取り図を描いた。
また、院政期の音声文化の転換点に関する論、読経道と諸分野(特に和歌)との交差についての論を公表した。さらに、法華経読誦に関する資料『法華読音』の紹介と解説を行った。『法華読音』は、天台教学との絡みで重要な書物であり、人的ネットワークを考える上で考究を重ねている。
以上は、前年度から行っている資料調査の成果をも取り込み、継続的に進めている諸資料の読み解きを基とするものである。今年度提起した問題については、なお発展させるべく、資料調査および諸資料の位置づけ・解読を重ねているところである。

Research Products

• [Publications] 柴 佳世乃: "読経道と和歌と学問と"日本古典文学会会報. 135号. 4 (2003)
• [Publications] 柴 佳世乃: "音声のルネサンス-読経道にみる中世文化-"隔月刊『文学』(岩波書店). 5巻2号. 1-10 (2004)
• [Publications] 柴 佳世乃: "西来寺蔵 義源撰『法華読音』解題と翻刻"人文研究(千葉大学). 33号. 1-31 (2004)
• [Publications] 柴 佳世乃: "読経道の研究"(株)風間書房. 402 (2004)