2002 Fiscal Year Annual Research Report
日本近現代文学における病の表象・イデオロギーの研究
Project/Area Number |
14710307
|
Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
木村 功 岡山大学, 教育学部, 助教授 (70280211)
|
Keywords | ハンセン氏病 / ハンセン病 / 病 / 文学 / 小川正子 / 小島の春 / ファシズム |
Research Abstract |
I ハンセン氏病 (1)ハンセン氏病医療担当者(医師)の研究 昭和10年代の長島愛生園医官であり,患者の収容活動に従事し,「小島の春」を著した小川正子に関する調査・研究を行った.小川の生誕地山梨県において取材を行った結果,小川正子が聖医として称揚されていることが明らかになった.その一方で小川には「小島の春」において,非人道的な療養所内の実態を,「救癩」というヒューマニズムの美名において隠匿するばかりか,社会に向けて療養所生活を楽園であるかのように宣伝する役割を担わされていたことがも明らかになった. (2)ハンセン氏病療養所の取材 長島愛生園において,小川正子や神谷美恵子と面識のあった元患者2名にインタビューし,療養所の生活の実態について聞き取り調査を行った.その結果,「小島の春」の内容に関して,(1)とも関連するように,実態とは隔絶した内容が描かれており,実態と作品との乖離に患者と社会との隔絶を読み取る必要があることが明らかになった. (3)関連図書の収集とデータ・ベース作成 関連図書は膨大な量に及ぶことが判明したが,予算の許す限りで手許に収集することにつとめた.データ・ベースについては,皓星社が既に作成しネット上で公開しており,この点については,当研究の作業対象から外し,(1)(2)の研究に重点化すべきであると判断した. II エイズ 今年度は,Iの研究に時間・予算の大半を割くことになり,エイズ関係の新聞記事を集めたり,特集番組を収録したりするにとどまった.
|