2004 Fiscal Year Annual Research Report
日本近現代文学における病の表象・イデオロギーの研究
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14710307
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
木村 功 岡山大学, 教育学部, 助教授 (70280211)
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Keywords | ハンセン病 / 小川正子 / 小島の春 / 遠藤周作 / 宮原昭夫 / 誰かが触った / 砂の器 / 愛する |
Research Abstract |
1 ハンセン病と文学 (1)小川正子「小島の春」の研究 昨年度「聖戦のディスクール-愛と抑圧の『小島の春』」と題して学会発表を行った(日本近代文学会九州支部大会,於県立長崎シーボルト大,6.22).今年度は,その発表内容に加筆して,論文化・発表した. (2)明治・大正・昭和期における文学作品とハンセン病 (1)明治・大正時代に発表されたハンセン病を取り上げた文学作品「対髑髏」(幸田露伴)「団扇太鼓」(生田葵山)「輪廻」(森田草平)「奥降り」(片山敏彦)について,ハンセン病が文学というマスカルチャーにおいてどのように表象されるのか,その通時的変遷の実態を明らかにするため,病史的研究を参照しながら考察を進めた. (2)遠藤周作の「私の・棄てた・女」や「雑木林の病棟」「死海のほとり」などに取り上げられるハンセン病患者の表象を対象に,社会的弱者をめぐる偽善と弱さの問題について考察を進めた. (3)宮原昭夫「誰かが触った」(1972年,河出書房)は,鈴木敏子『らい学級の記録』(1963年,明治図書)を題材に作品化されたもので,芥川賞受賞作(第67回・昭和47年上半期)でもある.有効な治療薬が出てからも隔離され続けるハンセン病患者の子どもたちを描いた作品で,今後の研究対象とするために資料収集を行った.同様に,対象としなければならないものとして,石川淳「通い小町」もある. (4)ハンセン病を題材・テーマとして取り上げた映画として,戦時中の「小島の春」(豊田四郎監督,1940年)や,「砂の器」(野村芳太郎監督,1974年),「愛する」(熊井啓監督,1997年)などがある.これらを貫く被差別的対象を感傷で以って美化して行く感傷主義的な態度と,その表現構造を規定する物語の問題を今後の研究課題とするために,資料収集を行った. 2 エイズと文学 今年度も,1の研究に時間・予算の大半を割くことになり,エイズ関連の新聞記事を集めたり,資料を収集したりするにとどまった.
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Research Products
(1 results)