2003 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
14710312
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Research Institution | Showa Women's University |
Principal Investigator |
山本 晶子 昭和女子大学, 人間文化学部, 講師 (90245879)
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Keywords | 馬瀬狂言 / 仙助能 / 番組 / 林寿三郎 |
Research Abstract |
1、奥野並之助関係の資料について 馬瀬狂言保存会所蔵資料全てを調査し、139点を確認した。内訳は、狂言台本類111種、謡本2種、囃子伝書20種、目録・番組を含むその他6種であった。全体に亙る調査によって、元の所蔵者は違うが、同じ伝本と推測される形式の資料が認められた。その一つである奥野並之助と記された狂言台本は十種あり、その中には大蔵流と記すものもあった。データベース化し、内容を検討したところ、大蔵虎寛本にほぼ一致する台本も一部認められた。これらの台本がどのように伝承され、和泉流と言われている馬瀬狂言の芸とどのように関わっていたのか、更に分析を進める。 2、仙助能番組二種(「天保二年能番組」・「嘉永四年能狂言番組」)について 馬瀬狂言資料には、辻能の仙助能と関わる資料が現存する。その資料の一つに仙助能の番組(「天保二年能番組」と「嘉永四年能狂言番組」)がある。これらの二種の資料について、その位置づけを行った。これまで仙助能の番組は個々に紹介されてきたが、全体をまとめて分析したものはなかった。そこで、愛媛県立図書館所蔵の番組を始めとして、仙助能の上演記録を収集・分析し、江戸後期の仙助能の実態を把握し、その上で馬瀬での上演の特徴を捉えた。上演日数・上演曲には、他の番組との共通性が見られたが、狂言の上演数は他に比べ多いことが認められた。また出演者の中には、今様能狂言の創始者である林寿三郎がいる。嘉永四年の番組は、彼が林寿三郎名で堀井惣右衛門や仙助に次ぐ太夫として活躍していたことが明確にわかる資料として注目される。このように、これら二種の番組が仙助能の実態を明らかにする重要な資料の一つであることを明らかにした。こうした仙助能が馬瀬狂言にどのような影響を与えていたのか、今後台本と照合して追究する。 (2003年度芸能学会研究大会(平成15年12月)にて口頭発表)
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