2002 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
14710319
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Research Institution | Saga University |
Principal Investigator |
秋吉 收 佐賀大学, 文化教育学部, 助教授 (90275438)
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Keywords | 魯迅 / 比較文学 / 中国近代文学 |
Research Abstract |
まず、関係資料の発掘調査を軸に研究を進めた。日本との関係について看過することの出来ない中国近代における非主流派、また魯迅等と対立陣営に位置付けられていた作家、雑誌等出版物の復刻などを積極的に渉猟し、魯迅研究及び「中日比較文学」の視点から、整理分析作業を進めている。今年度の具体的な研究内容としては、まず魯迅と芥川龍之介に注目した。実作の面から見れば「詩人」とは到底呼べない二人が終生執拗に「詩」を意識したことは、中国と日本の文人のあり方について考察する上でも興味深いものである。日本では文学と言えばむしろ「小説」が主体であるが、中国では古代より一貫して「詩」の方が重視されてきた。社会、人生に稗益してこそ文学であるとする「載道」を尊重する中国文人のあり方は、文化的に常に中国に範を求めた日本の文人にも多大な影響を与えたが、発達過程で大きな相違が生じたことは、それぞれの社会を考察する上でのヒントを与えてくれよう。中国における、こうした「詩」崇拝の現れとしての「詩人」魯迅形成について、拙稿にて考察した。魯迅が「詩人」であることは多くの先達によって語られ、それは魯迅文学のシンボルでもある。だが実際には、彼の著述の大部分は「雑文」と呼ばれるエッセイと翻訳で占められ、詩作は極めて少数である。「詩人魯迅」評価の成立と変遷を概観した上で、魯迅自身の思いに立ち返ってその評価に対する疑問を提起した。以上の研究により、魯迅、中日比較文学の領域に一定の新しい知見が提示出来たと考える。 なお現在、引き続いて魯迅、佐藤春夫、それに台湾をキーワードとした研究を進めている。来年度以降も、その成果を鋭意公表していきたい。
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Research Products
(2 results)