2003 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
14710319
|
Research Institution | Saga University |
Principal Investigator |
秋吉 収 佐賀大学, 文化教育学部, 助教授 (90275438)
|
Keywords | 魯迅 / 比較文学 / 中国近代文学 |
Research Abstract |
平成14年度に引き続いて、魯迅研究及び中日比較文学の視点から研究を進めた。また今年度は特に、視野を広げて台湾、香港といった中国と日本の周辺における近代文学の動向の分析にも取り組んだ。魯迅は7年間の日本留学を経て、日本人にも劣らない日本語運用能力を身に付け、そのことは彼の紡ぎ出す中国語の上にも濃厚な痕跡を留めている。だが、彼は日本人への手紙などやむを得ない場合を除いてほとんど日本語の筆を執らなかった。そこには、中国と日本が戦争に突入していった時代が暗く影を落としている。「台湾の魯迅」と称される作家、頼和は1894年に日本統治下の台湾彰化市に生まれた。彼は台湾総督府医学校出身で、日本語を強制された殖民地教育下のエリートであったが、自己の内面を披瀝する文学の上に決して日本語を用いることはしなかった。そうした彼の文学活動を支えたのが魯迅を始めとする中国大陸の新文学運動であり、彼の作品の上にも魯迅の影響が認められる。拙稿「植民地台湾を描く視点-佐藤春夫『霧社』と頼和「南国哀歌」」は、1935年、岩波文庫『魯迅選集』を出版して日本への魯迅紹介に多大な貢献をするなど、やはり魯迅との関わりの深い佐藤春夫を頼和と比較したものである。頼和については研究の過程で、魯迅との文学上の関係についての新しい発見があったので、研究を深化させ発表したいと考えている。 今後は、これまでの研究成果を活かし、『野草』等魯迅の代表作を中心に据えながら比較文学研究を更に進めていきたい。
|
Research Products
(1 results)