2002 Fiscal Year Annual Research Report
初期近代英国における演劇と印刷出版の相互交渉に関する考察
Project/Area Number |
14710331
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
廣田 篤彦 京都大学, 文学研究科, 助教授 (40292718)
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Keywords | 英文学 / 初期近代 / シェイクスピア / 演劇 / パンフレット |
Research Abstract |
本年度は特にWilliam Shakespeareに焦点を当て、その演劇作品と印刷出版との関係について考察をおこなった。具体的には、1)King Lear、特に、登場人物の一人Edgarが変装する狂人の乞食Poor Tomについて、この材源となったRogue Literatureとの関連において研究を進めた。特に、やはりこのジャンルに影響を受け、自らも一先行作品から剽窃することをも厭わず-The Belman of LondonやLanthorne and Candle-Lightなどのパンフレットを執筆、出版していたThomas Dekkerとの比較を試みた。この問題に関しては、来年度の研究計画の中心となる予定である、DekkerとThomas Middletonによる、The Roaring Girlの研究とも関係させながら研究を継続する予定である。 2)歴史劇、特にKing Richard IIIに関して、その特異な主人公であるリチャード三世像の生成について、Shakespeareが直接、間接的に材源とした印刷出版物であるRaphael HolinshedやEdward Hallの年代記やThomas Moreによる『リチャード三世の歴史』における記述とShakespeare作品を比較・検討した。特にリチャードの身体上の欠陥が次第に強調され、不吉な意味合いを持つものへと変わってきた様子と、材源に既に見られる不信のShakespeare劇における表現について考察した。この考察に関しては2002年10月におこなわれた第41回日本シェイクスピア学会において「シェイクスピアの歴史劇における情報の信頼性」と題して研究発表を行った。 本研究に関連するそのほかの研究成果は別欄に記したとおりである。
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