2002 Fiscal Year Annual Research Report
ゲルマン比較語学から見た中世英語のコンピュータ利用による文体論研究
Project/Area Number |
14710335
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
尾崎 久男 大阪大学, 言語文化部, 助教授 (60268381)
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Keywords | 古期ゲルマン諸語 / 動作名詞 / frommen / tun / 古期高地ドイツ語 / Evangelienbuch von Otfrid / 古期低地ドイツ語 / Heliand |
Research Abstract |
当該研究代表者は、本年度においてドイツ語における動作名詞(nomen actionis)と共起する動詞群を通時的に研究した。12月に開催された中世英語英文学会ではその成果をシンポジウムにおいて発表し、3月に発行された論文は予備的調査の役割を果たしていたものの,これまでの結果(尾崎久男(2001)など)に追加・補足するものであった。 特に,frommenとの競合関係から,これらの動詞のうち最も頻度の高いtunから調査を始めるのが肝要であったが,極端に用例の多いOtfridにおけるtunは,ラテン語からの影響などいろいろと複雑な要因も考えられるため,十分に時間を費やして調査する必要があると考えた。したがって,古期英語韻文作品における調査結果との比較検討を優先して,Heliandにおけるtunに焦点を絞って考察を続けていった。 要約すれば,1)高地ドイツ語で書かれたOtfridでは,frommenの用例が極端に少なく,tunが極端に多くなっている(総行数が約32,000行の古期英語による韻文作品ではfrommenが204例,machenが1例,tunが312例,wirkenが295例である。尾崎(2002:249)を参照),2)低地ドイツ語で書かれたHeliandでは,用例が頻度の割合においておおむね古期英語の調査結果と類似している。しかしながら,興味深いことにwirkenに関して言えば,使用状況が古期英語とは異なっており,frommenよりも頻度が低くなっている。 古期ドイツ語における高地・低地といった方言の異同や脚韻・頭韻といった文体の差異などを考慮に入れても、基本的な用法には両者において差異はないと思われる。しかしながら、本稿にあるように語法の上でかなりの開きがある場合も認めざるを得ない。さらに、今回の調査からも明らかなように、古期英語は言うに及ばず、ゲルマン語以外の諸言語(特にラテン語やフランス語を中心としたロマンス諸語)との比較・検討も重要な課題となってくる。
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Research Products
(1 results)