2003 Fiscal Year Annual Research Report
イギリス文学における人種問題とヒューマニズムの限界に関する研究
Project/Area Number |
14710339
|
Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
園井 千音 琉球大学, 法文学部, 助教授 (70295286)
|
Keywords | イギリスロマン派文学 / 奴隷貿易 / 人種理論 / 植民地 / ヒューマニズム / 布教活動 / 黒人 |
Research Abstract |
平成15年度 今年度前半は平成14年度からの継続研究テーマであるコールリッジと奴隷貿易廃止運動との関係について研究をすすめ、特に1790年代のゴールリッジの文学作品における道徳観と18世紀末ヨーロッパにおける人種理論の相関関係についての分析をまとめ、その結果を5月開催の第75回日本英文学会大会において口頭発表した。この発表内容はさらにコールリッジの哲学とロマンティックヒューマニズムというテーマにおいて、平成16年度には研究論文として発表する予定である。その際にはサウジーやワーズワースとの関係及びロマン派時代の宗教的背景と奴隷貿易に関する政治の関連において発展させる予定である。その為、8月から9月までイギリスのボドリアン図書館、大英図書館、ノッティンガム大学図書館、ノッティンガムトレント大学図書館においてロマン派詩人の宗教的背景及び奴隷貿易廃止運動に関するイギリス議会での議論の推移を中心とした政治的資料の収集を行った。 今年度後半はイギリスで収集した資料の分析を基礎として、ロマン派詩人を含む奴隷貿易に関する議論における絶対的なキリスト教優位主義の根底にあるものは何か、また植民地における布教活動をめぐるイギリス国教会と非国教徒の政治的社会的対立とその奴隷貿易廃止運動との相関関係についての研究を拡大充実した。具体的には植民地奴隷の西欧文化接触による「文明化」の必要性と便宜性を説いたエドマンド・バークやジェイムズ・ラムゼイなどの論点の整理とその分析、またレイモンド・ハリスの聖書による奴隷制の正当化論理の分析とそれらが奴隷貿易廃止論に与えた影響を研究した。さらにウィルバフォースに代表される奴隷貿易廃止論の政治的影響と奴隷貿易廃止論者の中心をなす非国教徒との勢力関係の分析を行った。ロマン派詩人の奴隷制に関する言説はこれらのキリスト教優位主義とその非国教徒としての非中央主義との見解とが複雑に関連しあっていることが理解された。
|