2002 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
14710345
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Research Institution | Tohoku Gakuin University |
Principal Investigator |
那須川 訓也 東北学院大学, 文学部, 助教授 (80254811)
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Keywords | ミニマリスト・プログラム / 分節内構造 / 超分節構造 / 弁別素性 / エレメント理論 / 音韻的裸句構造 / 英語軟口蓋鼻音 / 喉頭音源 |
Research Abstract |
平成14年度研究計画・方法に従い,極小論(ミニマリスト・プログラム)の観点から,次の二つの課題の遂行にあたった. (1)弁別素性理論における音韻範疇の再考と,それを踏まえた上での理論の改善. (2)弁別素性の束と考えられる韻律範疇(頭子音や核)間にみられる依存構造の再考と改善. (1)に関しては,表示上の余剰性を排除することに力点を置き,弁別素性理論の大幅な改定をおこない,従来より少ない数の素性で音韻表現を可能とする分節内表示モデルを考案した.具体的には,依存音韻論や認可・統率音韻論などで用いられてきた分節内表示(特にエレメント理論)を基本モデルとしながら,余剰素性の排除と,いくつかの素性の統合をおこない,過剰表示を生みだす能力を抑えたモデルの開発を試みた.(2)についても,(1)同様,表示上の余剰性を排する目的で,統語理論で用いられている裸句構造の基本概念を導入し,超分節構造の再構築を試みた.その結果,従来音節やモーラと考えられてきた形式的レベルを必要としないモデル(依存音韻論や認可・統率音韻論で論じられている超分節構造の折衷モデル)の構築に至った.(1)と(2)いずれの研究も,関連研究をおこなっている国内外の研究者(主に,ロンドン大学のJohn Harris教授と高橋豊美客員教授,そして九州大学のPhillip Backley助教授)との情報や意見の交換をもとに遂行された. 上述の研究成果は,平成14年度に開催された英語音声学会(EPSJ)東北支部第5回研究大会と,同年に開催された日本言語学会第125回大会のシンポジウムにおいて,それぞれ,「英語の軟口蓋鼻音の音韻的振る舞い」と「喉頭音源がかかわる動的同化現象」の分析を通して報告された.
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