2003 Fiscal Year Annual Research Report
日英語の数量詞と関係節の相関に基づく両者の統語的・意味的機能の研究
Project/Area Number |
14710349
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Research Institution | Hiroshima Jogakuin University |
Principal Investigator |
田中 秀毅 広島女学院大学, 文学部, 講師 (50341186)
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Keywords | 関係詞節 / 数量詞 / 部分構造 / 類別詞 |
Research Abstract |
本年度は日本語における関係節と数量詞の相関に焦点を当てて考察した。「太郎が本を2冊買った」という文において遊離数量詞「2冊」の先行詞(ホスト)を関係節化した表現(1)「[太郎が2冊買った]本」([ ]は関係節)については以前に考察しており、英語にも対応表現が存在する(the book [that John bought two copies of])。今回扱ったのは「太郎が本を2冊買った」の遊離数量詞が関係節化されて、その先行詞が関係節内に残留するパタンである。ただし、江口(2002)が指摘するように、関係節化される遊離数量詞は具体的な数を含まない「スケール」を表す表現(e.g.「冊数」)にする必要がある。このようにして(2)「[太郎が本を買った]冊数」が導かれる。なお、英語にはこの型は見られない。 (1)のように遊離数量詞のホストを関係節化した構文は<個体>の数量を限定することから「個体限定型」、(2)のように数量表現そのものに関係節がかかる表現を「数量限定型」と呼び、両者の構文の特性を比較した。結論としては、数量限定型の関係節は<事態>に焦点を当てる表現で、<個体>に焦点を当てる個体限定型とは異なり、事態の数を数えるのが本来の機能である。しかし、「[昨日大学に学生が来た]数」(数量限定型)と「[昨日大学に来た]学生の数」(個体限定型)では、結果的には解釈がほぼ等しくなる。というのは、学生が来るという<事態>において、事態の複数性は同時に個体の複数性をも含意するためである。このように2つのタイプの関係節の意味が近似するか否かは、関係節が表す<事態>の性質に依存する。なお、数量限定型関係節の主名詞が、数ではなく量を表す場合には、<事態>そのものの量を表すのではなく、当該事態を通じて累積した<個体>の量を表す。
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