2003 Fiscal Year Annual Research Report
自然言語における態交替現象に関する語彙意味論的研究
Project/Area Number |
14710372
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Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
今泉 志奈子 愛媛大学, 法文学部, 講師 (90324839)
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Keywords | ヴォイス交換 / 語彙意味論 / 動詞の意味記述 / 被影響 / 動詞分類 / 強い語彙主義 / 形式的アプローチ / 自動詞・他動詞 |
Research Abstract |
今年度は、平成14年度に実施した語レベルのヴォイス交替現象についての諸研究を基礎とし、それらの研究で得られた成果を句レベル・文レベルに拡張すること、さらに、語彙意味論研究が理論的な言語研究において果たす役割と今後の可能性を考察すること、以上の2点を主目的として研究をすすめた。特に、動詞の語彙情報の一部を成す意味記述において、「被影響」の意味関係をあらわす関数として仮定したAFFECTEDの理論的有効性を検証し、「被影響」の概念をより精微に形式化することによって、従来、例外的な文法現象としてとらえられがちであった、一見すると不規則的に見える「を」格の出現や、着点主語・経験者主語を選ぶ他動詞文、二重主格構文等に対して、統一的な分析可能性を提示した。 また、昨年度から今年度前半を使って積み重ねてきた広範囲のデータ(インターネットによるデータ収集のほか、文学作品における言語使用を分析対象としてとりあげた)に基づく観察・記述研究を基に、今年度の後半は、語彙意味論研究そのもののあり方、とりわけ「強い語彙主義」の立場に立つ形式的な語彙研究が今後の理論言語学の発展にいかに寄与するかを論点として、柔軟な記述力と包括的な説明力を併せ持った語彙研究の将来的な展望に議論を拡張することができた。今年度の後半の成果の一部は「日本語動詞の分類にもとづく統語論-カタチとイミから見えてくるもの」として『日本語学』に発表した。現在の日本語学研究のなかで、特に形式的なアプローチをとる語彙研究は「動詞の分類に基づく統語論」であるとの位置づけから、形式的な語彙研究の成立背景と現在、そして、今後の発展可能性について、具体例を使って概観したもので、初学者にも馴弛みやすい論文となるよう配慮した。さらに、今年度の成果は平成16年11月に予定されているシンポジウムにおいて発表する予定である。
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Research Products
(1 results)