2002 Fiscal Year Annual Research Report
中国積石山地域の消滅の危機に瀕した言語、保安語の調査研究
Project/Area Number |
14710374
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
佐藤 暢治 広島大学, 大学院・教育学研究科, 講師 (90263657)
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Keywords | モンゴル系言語 / 保安語 / 危機言語 / 文字の策定 |
Research Abstract |
本研究の目的は、主として中国の甘粛省臨夏回族自治州積石山保安族東郷族撤拉族自治県大河家鎮大〓村、甘河灘村や劉集郷高李村に居住している保安族12,212人(1990年)が話しているモンゴル系の言語、保安語積石山方言を危機言語の観点からフィールド調査を行い、その調査結果を公刊することにある。この保安語積石山方言は、言語資料が乏しいことに加え、近年若年層を中心に漢語化が著しく、今すぐに消滅するという危険性はないが、遅かれ早かれ消滅の可能性がある言語である。そのため、詳細な調査が求められている。 本年度は、平成12年8月と平成14年8月におこなった現地調査に基づき、『大〓保安語と甘河灘保安語のテキスト』を公刊した。ここには、今までTodaeve, B.X(1964)の民話1編などを除けば無かった保安語のテキストとして、大〓保安語のテキスト4編と甘河灘保安語のテキスト1編が国際音声字母(IPA)で表され、形態分析とグロスを施したうえで日本語訳とともに収録されている。また、論文「保安語積石山方言:下位方言と帰属意識-話者の視点からの考察-」では、日常頻繁に使われるいくつかの語が話者がどの村に属しているのかを示す標識としての機能を持っていることを聞き取り調査を通じて明らかにしている。 平成14年8月の調査では、そのほかに保安語の文字策定の一環として、筆者が大〓保安語に基づき中国のピンイン式ローマ字を用い作成した保安語の文字を現地でのし様が可能か否かの模索をおこなっている。また、今まで調査がおこなわれていなかった高李保安語についても調査をおこなっている。
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Research Products
(2 results)