2003 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
14710377
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Research Institution | Aichi Prefectural University |
Principal Investigator |
月田 尚美 愛知県立大学, 外国語学部, 助教授 (60305505)
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Keywords | オーストロネシア諸語 / 台湾原住民諸語 / セデック語 / 動詞 / 分類 / 意味役割 / 態 / メタテシス |
Research Abstract |
昨年度に引き続き現地調査に赴きセデック語の動詞の例文を集め,入力し,整理した.動詞の態と主語の意味役割について整理し,興味深い例が多く見つかった.例えば飲むことや食べることに関する動詞で器は通常GVの主語になり,箸やスプーンなどはCVの主語になる.「吸う」を表す動詞で,「ストロー」はGVの主語にもCVの主語にもなることができることが分かった.「ストロー」に対する認識が「器」の範疇と「カトラリー」の範疇の間を揺れていることを示している.また,「簡単に腹ごしらえをする」,「昼食をとる」などの動詞で,「食べるもの」がGVの主語になることとCVの主語になることの両方があることが分かった.CVは原型的な他動詞では道具を主語に取る態であり,日本語の「おにぎりで腹ごしらえをする/昼食にする」などの言い方でデ格で対象を表すのに似ている.日本語ではデ格の名詞句は「手段」を表していると考えられ,ここからセデック語の現象に関して推測すると,やはり食べるものを腹ごしらえの「手段」として捉えた言い方のように見える.食物がGVでもCVでも主語になれるということは,GVの場合は対象として捉えられ,CVの場合は手段として捉えられる,というふうに2つの捉え方が可能,ということを表していると思われる.また,接尾辞が付くさいにメタテシスが起こる例がいくつか見つかった.例えばpesebegihur「風を吹かせる」にCV不定形の接尾辞-aniが付くと,pesebegeher-aniになるはずであるが,pesebegereh-aniという,rとhが入れ替わった形が観察される.調査者がpesebegeher-aniかと確認すると,インフォーマントはそうだと答えるが,インフォーマントはpesebegereh-aniというメタテシスが起きた形でしか発音しなかった.
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