2002 Fiscal Year Annual Research Report
中国法典形成史―国家法の非国家的形成に関する通史的な考証
Project/Area Number |
14720002
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Research Institution | Tokyo University of Foreign Studies |
Principal Investigator |
陶安 あんど 東京外国語大学, アジア・アフリカ言語文化研究所, 助手 (80334449)
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Keywords | 法典編纂 / 史料批判 / 律学 / 肉刑復活論 / 減死 / 魏律 / 晋律 / 令典 |
Research Abstract |
本年度に行った研究によって得られた新たな知見は下記の通りである。 1、両漢における減死罪名の変遷に関する時代考証を通じて、減死措置が赦から分化し、減死条令に整備される過程が判明した。 2、両漢の律学著作の調査を通じて、律典形成に向けた法的知の学問的体系化が、減死条令を中心に行われたことが証明された。減死の恒常的実施および減死条令の明文化への注目は本研究を初例とする。 3、肉刑復活論の内容的再検討および時代考証によって、復活論と法典編纂とが「罪次」という罪名カテゴリーによって媒介されたこと、さらに出現時期及び変遷過程が律典の形成過程に対応することが解明された。先行研究では、肉刑復活論は専ら刑罰の論理で捉えられているのに対して、本研究は初めて罪名の分析を通じて法典編纂との関連に焦点が当てられた。 4、同時代的史料への限定によって魏律篇目に関する先行研究が見直され、次の篇目が新たに得られた。「盗、賊、囚、興、雑、金布、劫略、詐、毀亡、繋訊、請〓、興擅、乏留、驚事、償贓、免坐」。 5、『律九章』及び『法経六篇』に関する史料の時代比定によって、三国時代と唐代とではその篇目に関する認識が異なっていたことが判明した。従来知られなかった三国時代伝存の『律九章』は、「盗、賊、囚、興、雑、具」(=法経六篇)に「厩、金布」の二篇および未詳の一篇を加えた九篇から構成されている。 6、晋律の伝承過程に関する考証を通じて、南北朝の律学においても、「私的な法典」(南斉律等)が編纂されたこと、法典の管理が国家よりも律学によってなされた事実が示された。 7、令典に関する史料再考によって、北斉令において令が始めて法典の形式を備えたことが判明した。
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Research Products
(1 results)