2003 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
14720009
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
中林 暁生 東北大学, 大学院・法学研究科, 助手 (70312535)
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Keywords | 表現の自由 / 現代積極国家 |
Research Abstract |
本年度は、主として二つのテーマに関する研究を行った。第一のテーマは、「放送の自由」である。「放送の自由」の領域においては、たとえば免許制など、他のメディアには見られないような表現主体(放送メディア)と国家との関係が存在する。「放送の自由の領域に見られるような表現主体、表現の受け手、国家の相互関係と、「近代」的な国家と個人の関係を前提とした伝統的な「表現の自由」論における、表現主体、表現の受け手、国家の相互関係との異同についての検討を行った。この検討を通じて「現代」的な国家を前提とした、表現主体、表現の受け手、国家の相互関係を解明するための手がかりを得ることができた。第二のテーマは、本研究が探究するべき「現代積極国家」像を、表現の自由の原理論に照らして把捉することである。「現代積極国家」化の進展と共に、国家の「給付」作用は、多様化してきている。そのような「給付」作用を実効的に制限する「表現の自由」論を確立するためには、多様な「給付」作用を通じて実現しようとする「公益」と,「表現の自由」論が守ろうとする価値との相互関係を解明する必要がある。本研究が昨年度の研究によって確立した理論的視座の下で、そのような相互関係の解明を行った。以上二つの研究を行ったことで、「現代積極国家」化の下で多様化する国家と諸個人の関係を、伝統的な「表現の自由」論の限界を見きわめつつ解明し、更に、「現代」的な国家作用の特殊性に即しつつそれを実効的に制限しうる「表現の自由」論を展望することができた。
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