2003 Fiscal Year Annual Research Report
気候変動の防止に向けた多様な政策手法の活用と国内法制度の整備に関する研究-排出権取引、課税、協定等の相互補完的・複合的導入をめぐる欧州の取組みを事例として-
Project/Area Number |
14720014
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
奥 真美 長崎大学, 環境科学部, 助教授 (30304968)
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Keywords | 気候変動税 / 気候変動協定 / 排出権取引 / イギリス / EU / 気候変動税パッケージ |
Research Abstract |
本年度は、昨年度に引き続き、イギリスが導入している気候変動税と気候変動協定(気候変動税パッケージ)および排出権取引制度の運用状況ならびに課題についで調査を行った。さらに、EUにおいても、2003年10月に温室効果ガスの排出権取引スキームに関する指令が採択されたことから、この内容および加盟国に求められる対応等の把握を行った。調査にあたっては、イギリス環境食糧農村省(DEFRA)、ロンドン大学インペリアルカレッジ、EU本部を訪ねでヒアリングならびに資料収集を行ったほか、ロンドンで開催された排出権取引に関するワークショップに参加するなどして、最新の情報収集につとめた。他方、わが国においても、2003年8月に中央環境審議会等からの報告として「温暖化対策税制の具体的な制度の案」が提示されたことで、税の具体的な導入に向けた検討が活発化しているため、この検討状況を、フォローするとともに、シンポジウム等に参加して気候変動関連法制の専門家などと意見を交わした。 イギリスにおいては、気候変動税パッケージが2001年4月から、排出権取引制度が2002年4月から始動しているが、EUの指令が採択されたことで、これとの整合性を確保する必要が生じている。たとえば、制度の対象となるセクターの範囲、取引の対象となる温室効果ガスの種類、ガス量の把握の仕方、(絶対量なのか、原単位あたりなのか)などの点において、EUの制度との整合が求められている。こうした点の差異とそれぞれのメリット・デメリットを評価分析するとにより、わが国における制度設計に対する貴重な示唆を得られることになる。また、EU域内における排出権取引は2005年から開始されることになっており、この準備作業として、イギリスをはじめとする,EU加盟国による排出枠を分配するためのナショナル・プランの策定が進められているが、公平性・透明性が高く、経済効率的に温室効果ガス削減を図ることができる分配方法とはいかなるものかを見極めるうえで、こうしたナショナルプランの内容検討は有意義な情報を提供してくれるものと思われる。これについては、引き続き来年度の研究対象としたい。
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Research Products
(2 results)