2003 Fiscal Year Annual Research Report
民事司法改革実現のための効果的な不服申立システムの検討
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14720029
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Research Institution | Seijo University |
Principal Investigator |
安達 栄司 成城大学, 法学部, 助教授 (50273157)
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Keywords | ドイツ / 司法制度改革 / ヨーロッパ法の統一 / 訴訟差止訴訟 / 濫訴に基づく損害賠償 / クラス・アクション / 懲罰的損害賠償 / 戦後補償 |
Research Abstract |
平成15年度は、本研究課題にかかるテーマの中でも手続外部的不服申立の可能性を検討した。手続外部的不服申立とは、具体的な訴訟手続の遂行そのものを外部から抑制するような法制度である。濫用的提訴行為に対する損害賠償責任の追及と訴訟差止訴訟(アンチスートインジャンクション)がその中心テーマである。具体的には、濫用的提訴に関しては、伝統的には訴訟上の信義則の一態様として議論されてきた伝統的テーマである。次に、訴訟差止訴訟は、近時の国境を越えた訴訟事件、欧州と米国にまたがる国際事件において訴訟競合状態が発生したときの内国裁判所での訴訟戦略の一つとして注目されている。いずれも、事後的な提訴抑制装置として機能するものであるが、それが過剰な場合には正当な権利行使が抑制される危険性も生じる。 これらの問題について、基本的な文献の収集と検討のほかに、ドイツ・ケルン大学手続法研究所に出張して、ヨーロッパの研究者および実務家に面接調査をすることができた。そこからは、ヨーロッパの政治的経済的統合に伴う法統一の傾向は、いっそう拍車がかかっているのに対して、依然として大西洋をはさんだアメリカ合衆国との関係では、司法摩擦状態はなくなっていないこと、むしろ先鋭化していることなどが明らかになった。このことは、世界統一の民事訴訟法ルールの策定を目指す国際条約案の挫折としても指摘されていた。司法摩擦の要因は、アメリカ法の過激な法制度、ずなわちクラス・アクションと懲罰的損害賠償にあることは従前の議論から明らかになっているが、問題の場面が製造物責任や消費者保護という伝統的な法分野から、知的財産権保護および第二次大戦の被害者補償という新しい法政策を反映した問題領域に広がっていることが興味深い。 具体的な研究実績として、以上の問題状況の解明につながる論文および紹介等を複数の雑誌に公表することができた。
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Research Products
(6 results)
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[Publications] 安達栄司: "契約上の不作為義務違反と履行地裁判籍"国際商事法務. 31巻4号. 529-532 (2003)
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[Publications] 安達栄司: "アメリカ著作権侵害事件の国際裁判管轄"ジュリスト臨時増刊平成14年度重要判例解説. 284-286 (2003)
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[Publications] 安達栄司: "外国裁判所の国際的専属管轄の成立と応訴管轄の成否"ジュリスト. 1250号. 236-239 (2003)
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[Publications] 安達栄司: "預託金会員制ゴルフクラブの当事者能力"NBL. 769号. 71-75 (2003)
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[Publications] 安達栄司: "消費者団体による予防的差止訴訟の国際裁判管轄"国際商事法務. 31巻12号. 1748-1752 (2003)
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[Publications] 安達栄司: "ハンス・プリュッティング・手続的正義"成城法学(成城大学法学会). 71号. 35-49 (2004)