2003 Fiscal Year Annual Research Report
差別是正の法理論から新しい権利へ-「家庭生活を営む権利」の確立を目指して
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14720044
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Research Institution | Hokkaido University of Education |
Principal Investigator |
菅野 淑子 北海道教育大学, 教育学部・岩見沢校, 助教授 (90301960)
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Keywords | 家庭生活 / 権利 / 育児休業 / 女性労働者 / 男性労働者 / ノルウェー |
Research Abstract |
今年度は、本研究においてわが国との比較対象とする予定であるノルウェーの制度についての調査を中心に研究をすすめた。家庭生活を営む権利について考えるときに参考となるのが、労働者が仕事を辞めることなく育児や看病、介護等の家族的責任を果たせるように支援する法律である。わが国では「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」がこれにあたるが、ノルウェーの制度はどのようなものかについて調査を行った。 ノルウェーの育児休業制度は、「労働環境法:Lov om arbeidervern of arbeidsmiljo」「国民保険法:Lov om folketrygd」の二つの法律によって規定されている。労働者に対して付与される育児休業は、当初の12週から拡大を続け、現行制度においては、休業前賃金100%の給付つきで42週、80%の給付つきで52週の期間が保障されている。同時に、父親専用の4週間の育児休業が設けられており(いわゆる、パパ・クオーター制度)、この休暇部分は母親が取得できない休暇となっている。このような制度設計からも、男性が育児をするために休暇をとることが一般的であり、4週間か、それ以上の期間の育児休業を利用する男性は、実に子どもを持つ男性の9割ほどになるという。法による制度設計のなせる結果なのか、それとも、家庭生活を守るべきであるという意識(権利意識というには難しいかもしれないが)を強く持っていることからくるのか、まったく異なるインセンティブによるものなのか、非常に関心がもたれる。もし、「家庭生活を営む権利」に類するものが法に反映された結果だとすれば、より興味深い。 ノルウェー人研究者が書いたこれらの制度に関する論稿の中に、「ノルウェー法の根底には家族主義がある」ことを論じたものがある(Elisabeth Vigerust : Caregiving, Time and Flexibility-The Family Principle in Norwegian Employment Law, Perspectives of Equality 2000)。彼女の論文の分析を中心に、平成16年度はさらに研究を進めたい。
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Research Products
(1 results)