2002 Fiscal Year Annual Research Report
近代日本成立期民衆の秩序形成―秩父事件を事例として
Project/Area Number |
14720087
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Research Institution | Kwansei Gakuin University |
Principal Investigator |
高島 千代 関西学院大学, 法学部, 助教授 (90283382)
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Keywords | 近代成立期 / 民衆運動 / 自由民権運動 / 秩序形成 / 地方自治 |
Research Abstract |
本研究では、秩父事件の際に要求として掲げられた「諸問題」(負債延納、村費・学校費・雑収税の軽減徴兵令改正)の解決方法とそれを支える人間関係に視点をおき、事件を通じた秩序意識・権力観の変化、事件後の関係地域の秩序再編について考察することを目的としている。 14年度は、<1>幕末から1883(明治16)年事件前、<2>1883年12月郡役所請願から1884年10月の蜂起<3>蜂起解体・裁判から1889年市制町村制の施行までの期間について、「諸問題」に関わる戸長役場・町村会・村吏の動向や、当地域の産業組合・信用組合化に関わる史料収集を、埼玉県立文書館・吉田町教育委員会・秩父市立図書館で行った。その結果、行政文書と家文書については秩父郡関係町村について既に存在する全史料目録を調査し、そのうち埼玉県立文書館所蔵の行政文書について、<1>〜<3>の全期間に関してほぼ閲覧、必要なものを複写した。また吉田町教育委員会所蔵の史料としては太田部村「新井家文書」中にある、明治18・20年の日記(17年度は所在不明)等を閲覧・複写し、秩父市立図書館では元館長である千嶋久氏のご協力で、秩父事件の前史である1866年武州世直し一揆の史料(「松本家文書」の一部)を閲覧・複写した。当初の予定としては、主に<1><2>の期間に関わる民権運動以外の史料収集を行うこととしていたが、<3>に関わる文書館史料の収集も行ったため、特に<2>の蜂起における軍隊の動向・対応に関わる史料の収集ができなかった。 以上の史料収集をうけて、博士論文「秩父事件の全体像に向けて-近代成立期の民衆運動と地域秩序」の第一・第三部を中心に、加筆・修正を行った(ただし、未発表)。また史料収集の副産物として、秩父事件の中心人物の一人である井上伝蔵に関する行政文書を発見したので、これをもとに一論考(「困民党事件と二重抵当に関する一史料」)をまとめた(『法と政治』54巻2号に掲載予定)。
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Research Products
(1 results)