2002 Fiscal Year Annual Research Report
オランダモデルの政治学 -オランダ社会民主主義における政治理念の転換と政策革新-
Project/Area Number |
14720088
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Research Institution | Konan University |
Principal Investigator |
水島 治郎 甲南大学, 法学部, 助教授 (30309413)
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Keywords | 社会民主主義 / オランダ / 福祉国家 |
Research Abstract |
本年度は研究の初年度に当たるため、研究対象であるオランダ労働党の80年代中葉から90年代後半にかけての展開につき、基礎的な資料収集を行うとともに、同時期のオランダの政治経済的な変容について文献収集と検討を行った。80年代前半まで、福祉国家の拡大・主要産業の国有化と経済統制といった伝統的社会民主主義路'線を歩んできたオランダ労働党は、80年代半ば、党勢の伸び悩みと中道政党との連立合意の困難という事態に直面して、市場原理の容認、従来型福祉国家への見直しなどの政策転換に着手し、90年代初頭までにほぼ完了したが、本研究ではこの時期の労働党の機関紙・定期刊行物、および雑誌・新聞などを収集することによって、労働党の党内ダイナミズムを明らかにすることを試みた。その際明らかになったことは、80年代にEMSなどいっそうの進展を見た欧州統合という現実が、一国主義的な社会民主主義路線を堅持していたオランダの社会民主主義者に対して根本的な発想の転換を迫り、改革を促していったということである。この時期のオランダはEMS参加・財政赤字などによって財政経済政策の余地が極端に狭められ、伝統的な社会民主主義的政策の可能性を極めて困難としていた。以上のような展開を明らかにするため、資料収集は豊富な文献を所蔵する東京の研究機関およびオランダ現地で行った。またオランダと類似した社会民主主義政党の大規模な政策転換が80年代に行われた国としてフランスが知られていることから、フランスの同時期の政治状況に関する資料なども収集し、比較検討を行った。
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Research Products
(1 results)