2003 Fiscal Year Annual Research Report
オランダモデルの政治学 -オランダ社会民主主義における政治理念の転換と政策革新-
Project/Area Number |
14720088
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
水島 治郎 千葉大学, 法経学部, 助教授 (30309413)
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Keywords | ワークフェア / オランダ / 就労支援サービス / 社会民主主義 / 就労可能性 / 大陸型福祉国家 |
Research Abstract |
オランダでは1994年に労働党を中心とする「紫連合政権」という非宗派連合政権が成立し、そのもとで従来の「大陸型福祉国家」を栗り越えることを目指す福祉国家改革、サプライサイドに重点を置いた経済改革が開始された。本年度はこの福祉国家改革に関する資料収集と検討を継続するとともに、紫政権下の政策実現のプロセス、そして90年代後半にヨーロッパ各国で政権に到達した中道左派諸政党の政策との比較対照を行った。そのさいオランダ労働党を軸として、論文・書籍などの二次資料はもとより新聞・雑誌などの一次資料も収集して研究を行ったが、とりわけオランダの労働党が福祉改革に際して「給付所得より就労を」を合言葉とするワークフェア改革を進めたことに注目し、その政策内容を詳しく明らかにするとともに、他のヨーロッパ諸国におけるワークフェア改革、とりわけスウェーデンなど北欧における積極的労働市場政策の展開、イギリスにおける「福祉から就労へ」、フランスにおける労働時間短縮と公的雇用の増大、ドイツにおける職業訓練の拡大といった政策との相違についても幅広く検討を行った。その結果、オランダにおけるワークフェア改革は一方で英米型の「懲罰的」ワークフェァの要素を導入しているものの、同時に公的資金による就労支援サービスの提供など北欧型の「サービス型」ワークフェアの性格も併せ持っていることが明らかとなった。「大陸型」福祉国家の欠点を補いつつ、同時に労働者の就労可能性の向上に焦点を当てた政策が導入され、一定の効果をあげていることがみてとれる。以上の研究は2004年2月のオランダにおける資料収集活動によって補強された。
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