2002 Fiscal Year Annual Research Report
動学的貿易理論における経済政策と不決定性の相互作用
Project/Area Number |
14730006
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
内藤 巧 東京工業大学, 大学院・社会理工学研究科, 助教授 (80314350)
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Keywords | 動学的貿易理論 / 経済政策 / 不決定性 |
Research Abstract |
本年度は,物的資本と人的資本が存在し,規模に関して収穫一定が成立している,3部門小国開放内生成長モデルを構築した.この経済には,貿易財である物的資本財と消費財を作る2つの法人部門と,非貿易財である人的資本財を作る1つの教育部門が存在する.このモデルでは,貿易財の特化パターンによって,移行経路が鞍点安定になる場合もあれば,不決定になる場合もあることを示した.これは2つの理由から生じる.第一に,法人所得税(法人のみの物的資本収益への課税)の下では,稼動している法人部門と教育部門の間の,価値的な意味での要素集約度ランキングと,物理的な意味での要素集約度ランキングが異なり得,それが過剰な安定力をもたらし得るからである.第二に,特化パターンの変化は,稼動している法人部門の要素集約度を不連続的に変化させるからである.この研究をまとめた論文は,現在審査中である. また,今年度の前から継続して行っている,2国1財国際貸借モデルにおいて不決定性が起こる可能性を示す研究も再開した.このモデルには,平均資本ストックが生産性を高めるという形の生産外部性と,平均消費が時間選好率を高めるという形の消費外部性が存在する.そして,それぞれの外部性が十分強いとき,均衡経路が不決定になり,しかも,政策変数などのパラメーターの変化が定常解に与える影響も通常と逆になることを示した.現在,ある形の内生的時間選好の下では,消費外部性が存在せず,生産外部性が小さくても,不決定性が起こるのではないかという予想を立て,モデルの改良を構想している.
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