2002 Fiscal Year Annual Research Report
Screening Deviceとしての契約の分析
Project/Area Number |
14730008
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Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
下地 誠 横浜国立大学, 国際社会科学研究科, 助教授 (00323923)
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Keywords | 契約理論 / ゲーム理論 |
Research Abstract |
今年度は、日米の石油産業、特に卸・小売りガソリン市場のデータを利用することによって、契約形態の違い -特に短期契約と長期契約の比較-が経済活動にどのように影響するかを分析してきた。 米国石油産業は卸・小売市場を通して「メジャー」のpresenceが大きいのに対し、日本の小売市場においては規模の小さい企業が数多く存在している。前者においては、同一企業が卸・小売りを通した企業戦略が可能であるのに対し、後者では卸企業と小売り企業の利害が対立する構造となっている。 まず、卸企業のマージンが景気変動、あるいは季節変動にどのように反応するかを考察した。米国ガソリン市場を扱った先行論文として、Borenstein and Shepard (Rand Journal of Economics, 1996)があり、小売企業のマージンが需要変化に対して「pro-cyclical」である事を示している。今回、同様な分析を日本ガソリン市場に応用し、日本の小売企業のマージンが需要変化に対してむしろ「counter-cyclical」である事を示した(今論文「Countercyclical Margins : The Case of the Japanese Retail Gasoline Markets」は成蹊大学経済学部井上氏との共著として現在refereed journalに投稿中である)。この結果は理論的な予測と整合的である。 更に、今論文を補完する目的で、原油価格の変化をどのように卸・小売企業の利潤のなかでabsorbするかを分析している。契約形態の違いが必然的に企業間のbargaining powerへ影響を与えるため、日米間の契約形態の違いが重要であれば、この「パイの取り合い」にも必然的に違いが出てくるはずである。今分析は現在進行中である。
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