2002 Fiscal Year Annual Research Report
社会における協調と情報ネットワークの関係についての理論的研究
Project/Area Number |
14730014
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
関口 格 京都大学, 経済研究所, 助教授 (20314461)
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Keywords | 繰り返しゲーム / 私的観測 / フォーク定理 / 観測費用モデル / 協調不可能性命題 |
Research Abstract |
本年度は、不完全観測の繰り返しゲームについて、プレーヤーが相手の過去の行動に関する私的情報を受け取るという私的観測のケースを中心に分析を行った。特に、以下のような成果を得た。 1.私的観測の一例として、そのままでは相手の行動についての情報を何も得ることができないが、コストを払えば行動を正しく観測できるモデルを考えた。この観測費用モデルは、コストなしで過去が観測できる標準的なモデルとは大いに異なる。というのは、観測費用がある限り、プレーヤーはなるべく相手を観測しないで済ませようとするインセンティブを持つからである。しかしそのようなインセンティブを所与とすれば、均衡からの逸脱はもはや見破られず、結果として協調達成は困難になる。 このような環境においても、プレーヤーに観測するインセンティブを与え、結果として様々な行動を均衡として達成できることを証明した。特に、プレーヤーの戦略空間が十分広い場合に、観測費用が小さい限り任意の協調レベルを均衡として近似できるという近似フォーク定理を得た。同時に、このアイデアを有限回繰り返しゲームや、一度の観測で多くの期間の行動がわかるような多期間観測モデルに応用するための準備的分析を蓄積した。 2.一般的な不完全(私的)観測の有限回繰り返しゲームを考え、そのようなゲームで協調が全く不可能であるための条件、つまり短期的な均衡の繰り返しのみが長期的関係の均衡となるようなケースの特徴づけを試みた。均衡ミニマックスという、純粋戦略均衡や定和ゲーム均衡が満たす性質が、この否定的命題の十分条件になることが明らかになった。この種のゲームの協調的な均衡の特徴づけはまだ十分には進んでおらず、ゆえに協調的な均衡が存在しないケースを明らかにすれば協調が可能なケースの理解の手がかりになる、と期待している。
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Research Products
(2 results)
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[Publications] Tadashi Sekiguchi: "Existence of Nontrivial Equilibria in Repeated Games with Imperfect Private Monitoring"Games and Economic Behavior. 40. 299-321 (2002)
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[Publications] George Mailath, Ichiro Obara, Tadashi Sekiguchi: "The Maximum Efficient Equilibrium Payoff in the Repeated Prisoners' Dilemma"Games and Economic Behavior. 40. 99-122 (2002)