2002 Fiscal Year Annual Research Report
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14730051
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
橋本 優子 慶應義塾大学, 大学院・政策・メディア研究科, 専任講師 (80333037)
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Keywords | 円ドル為替レート / GARCH分析 / 分散 / 金融危機 / マーケットマイクロストラクチャー |
Research Abstract |
本研究は、1997年7月1日から1998年1月9日までのブローカー提示の円ドルレートBID-ASKデータ(TICHデータ)を用いて、日本の銀行破綻が為替市場の取引に及ぼした影響の分析をおこなった。データセットは各ディーラーの提示する売買の全ての気配値をレコードしたものである。分析方法は3通りである。第一に、10分毎の最終値を用いて、為替リターンの分散の影響をGARCHモデルで月毎に推定する。第二に、GARCH分析結果の月毎の違いが有意であるかどうかを確かめるためF検定を行う。第三に、BidとAskそれぞれの提示数(Quote Entry)や値幅を細かく分析し、ディーラーの行動を分析する。 第一に、為替リターンの分散には非対称性やvolatility clusteringの存在が明らかとなった。また、条件付き分散の係数は1に近く、分散に対するショックの持続性が認められた。月毎に予期せざるショックからの影響を比べると、11月はサンプル期間平均に比べて低く、過去のreturn分散の影響が強いことが分かる。一方、7月および12-1月では、returnの分散が平均に比べて低い。推定結果の頑健生を確かめるため、GARCH、EGARCH、GARCH-Mモデルの3種類で推定を行った。次に、分散の非対称性の違いを月毎に検定した結果、11月とそれ以外の月が有意に異なることが判明した。以上の結果から、11月の一連の銀行、金融機関破綻が、為替リターンに影響を及ぼしたと考えられる。最後に、三洋証券、北海道拓殖銀行、山一証券破綻の各日(前後3日)の為替ディーリングを分析した。気配値のQuote数、値幅、気配値の更新頻度を、破綻に関するニュースの関連を調べた結果、三洋証券のケースは破綻ニュースがほとんど為替市場に影響していない。一方、北海道拓殖銀行や山一証券の破綻は、気配値提示を控えたり更新頻度が減るなど、為替予想が難しくなり、為替ディーリングに大きな影響を及ぼしたことが明らかとなった。一連の銀行破綻によって為替の予想が難しくなり、取引形態に大きく影響したことが示された。
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