2003 Fiscal Year Annual Research Report
複数市場の均衡を利用することで個票データの不足を集計量で補完する方法の開発と応用―ゲートキーパーの導入が医療費を抑制する効果に関する実証分析への応用―
Project/Area Number |
14730052
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Research Institution | Sophia University |
Principal Investigator |
青木 研 上智大学, 経済学部, 助教授 (70275014)
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Keywords | 構造推定 / 参入規制 / 医師誘発需要仮説 / 医療計画 |
Research Abstract |
この研究では、医療市場の実証分析で常に問題となる「個票データの不足」を、集計量を用いて補完する手法を開発し、さらに、その手法を日本の医療サービス市場分析に適した形に定式化することを目的としている。 実際に集計量を用いてデータの不足を補う過程では、個々の行動で個人属性に依存する部分を個票利用の場合と同様にパラメータ化。個人属性の分布を与えると、市場均衡がどのようになるか求まる。そこで、個人属性の分布が実際の集計量に等しいという条件のもとで、導出される均衡が実際の市場均衡と等しくなるようにパラメータを推計する、という手続きを踏むことになる。 今年度は上記手法の応用として、医師による需要誘発の可能性が、医療機関の長期的な参入行動に与える影響について実証分析を行った。これは、上記の第1段階で設定するパラメータの値が、政策決定上興味深い対象だからである。より具体的には、需要誘発行動を考慮に入れたとき市場は病床を地域的に適切に配分する機能を持つのかどうか、病床の地域的分布決定に政策介入する必要があるのかどうか、といった問題がこのパラメータの大小に関連している。 実証分析で対象としたのは病院の一般病床、期間は1973-80年で、都道府県別の集計データを用いている。推定の手順としては、医師の効用関数を明示的に定式化した上で均衡を求め、この均衡条件を満たしながら参入行動が起こっているものとして構造パラメータを推定している。
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