2002 Fiscal Year Annual Research Report
戦後日本の電子工業における技術開発と技術者のメンタリティ及び意思決定
Project/Area Number |
14730065
|
Research Institution | Okayama Shoka University |
Principal Investigator |
川合 一央 岡山商科大学, 商学部, 講師 (80330538)
|
Keywords | イノベーション / メンタリティ / 技術開発 / 高等教育 / 高等工業 / 大学 |
Research Abstract |
本研究は、イノベーション生成プロセスついて、具体的な事例を取り上げて実証分析を行うものである。この事例として戦後日本の電子工業に注目し、技術者のメンタリティ形成過程および技術に関する意思決定過程を組み込んだ技術開発の特徴を明らかにする。この問題意識を背景にした本年度の研究成果は以下のとおりである。戦後から高度成長期にかけて企業で技術開発を主導した多くの技術者たちは、戦前期の高等教育を経て企業に所属することとなった。この事実を解釈するために、「人的資本」に関する理論的文献のレビューを行った。そこでは、シグナル理論も存在する一方で、技術の生成を可能にする人的資本にとって教育機関が一つの社会的役割を果たしてきたことが指摘されていた。本研究の、技術者がどのようなプロセスでどのようなメンタリティを形成したかという一つの主要な課題は、「人的資本」といった理論的問題に対しても一つの回答を提示しうる性格をもつことが明らかとなった。 そこで技術者を養成する高等教育機関の性格について、史料に基づいて調査した結果、日本の高等教育機関は世界史的に以下の特徴をもつことが明らかとなった。すなわち第一に、高等教育機関のなかにおいて技術者を養成してきたこと自体が日本の一つの特徴であった。第二に、日本の独自の制度であり、大学と同様に技術者養成機関であった高等工業は、大学をはるかに上回る人材を企業に供給するという役割を果たしてきたことが明らかとなった。 企業に在籍して以降の技術者のメンタリティや意思決定に影響を与えると想定される、電子工業各社の経営戦略、市場における競争、消費者の製品選択行動などの外的条件を明らかにするという計画については、本年度の成果に基づいて、高等工業と大学によって供給された人材の特徴を明らかにした上で、来年度以降に明らかにしていくこととした。
|