2003 Fiscal Year Annual Research Report
動学的CGEモデルの開発とそれにもとづく公共政策のシミュレーション分析
Project/Area Number |
14730078
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Research Institution | Konan Women's University |
Principal Investigator |
吉田 有里 甲南女子大学, 人間科学部・人間環境学科, 講師 (50340914)
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Keywords | 公的年金保険制度 / 貧困ライン |
Research Abstract |
本格的な高齢化社会が進むなか、現在公的年金保険制度改革の議論が盛んに行われてい。年金改革に関する議論では、財政の持続可能性の観点から、支給開始年齢や給付レベルの見直し、年金保険料の引き上げ、消費税の福祉目的税化など、様々な案が検討されている。その多くの改革案が、給付水準の引き下げという点で共通している。しかし、果たして給付水準をどの程度にすべきなのかという基本的な問題に対する研究は少ない。 従来は、国が最低限保障すべき所得水準の目安として、生活保護費が用いられることが多かった。しかし、生活保護費は、国が最低限保障すべき所得水準の一つの基準ではあるものの、真の生活実態を表しているとはいえない。そこで、公的年金保険制度が最低限保証すべき水準を、『国民生活基礎調査』のデータを用いて検証し、真の弱者の生活実態を明らかにすることにした。 具体的には、年齢階級別・所得階級別に所得構成、消費性向等を検証した。その結果、総所得150万円未満の全ての世帯では貯蓄の取り崩しが行われるなど生活は困窮しているが、なかでも75歳以上の単身女性ではその程度が著しく大きいことが分かった。また、通院・要介護状態別にみると、施設介護よりも入院のほうが家計を圧迫させていることも分かった。このように、本研究により、新たに75歳以上単身女性という弱者に対する配慮が、公的年金保険制度改革の議論では必要なこと、さらに社会保障全体でのバランスの良い改革が求められることが確かめられた。 なお、本研究は、日本版CGEモデルにおける政府部門と家計部門のパラメーターを得るためと、これらを用いた社会保障政策分析の一部として行った。
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