2002 Fiscal Year Annual Research Report
製品ライフサイクルにおける組織的限界-ロングセラー商品への依存体質のマネジメント
Project/Area Number |
14730081
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Research Institution | Otaru University of Commerce |
Principal Investigator |
坂川 裕司 小樽商科大学, 商学部, 助教授 (40301965)
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Keywords | 製品ライフサイクル / 組織間関係 / 流通チャネル |
Research Abstract |
平成14年度の研究成果は分析に不可欠な文献のレビューと分析対象となる事例の発見である.まず文献のレビューはマーケティング論における製品ライフサイクル研究を押さえた上で,さらに組織間関係論,産業財マーケティング論における関連研究をレビューした.このような広範囲に及ぶ文献レビューは発見した事例に既存の製品ライフサイクル論の枠組みでは分析できない問題を見出したからに他ならない.従来の製品ライフサイクル論はおもに製品カテゴリーを分析レベルに設定し,その動態を記述し予測/統制するための概念を提示してきた.また近年では単なる記述概念の提示から製品開発パターンと市場動向との関連を時系列的に記述することで,両者間に相互作用の存在することを示す研究もある.しかしながら先行研究では次の問題が分析上,考慮されていない.それはチャネルの存在である.企業の製品はダイレクトに消費者に販売されているのではなく,その多くの製品が流通業者を介在している.ここに焦点をあてるならば,製品ライフサイクルは市場との相互作用ではなく,生産者と流通業者との相互作用による影響を受けると考えられる. 事実,平成14年度の調査においてある大手スポーツ・アパレルメーカーにおいて,小売業者との相互作用が製品ライフサイクルに影響を及ぼした事例を発見した.それは取引関係における依存がアパレルメーカーにとっての製品開発を制約し,結果的に販売力のあるブランドが競争力を失っていったという事実である.この事例から考えるならば,メーカーにとって製品ライフサイクルをマネジメントすることは,単に市場での販売動向を予測し,PLC段階適応的なマーケティング手段を講じるだけではなく,取引先となる流通業者との関係をマネジメントすることも重要な意味を持っていると推察できる.次年度はこの事例を詳細に分析する.そして分析結果を踏まえて,ロングセラー商品への依存体質が組織的な硬直性を高めた要因を探る予定である.
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