Research Abstract |
本年度の研究概要は,以下の2点である.第1に,現在の研究対象である大手芸能プロダクションを取り巻く企業との関係について,文献調査および聴き取り調査を実施した.昨年度に実施した予備的な聴き取り調査から,大手芸能プロダクションの事業は,タレント(歌手や俳優を含む)のマネジメント,映画やテレビ・ラジオ番組,ステージ等の演芸の企画・制作,レコード原盤および音楽録音物の企画・制作ならびに販売の3つから構成されることが明らかになった.これら3つの事業に関わる企業には,映画会社やテレビ局,ラジオ局,レコード会社,出版社,さらに音楽著作権を管理する団体等がある.本年度は,特に映画会社とテレビ局に焦点を当て,芸能プロダクションとの関係を調査した. 第2に,日本のエンターテイメント産業の海外進出の現状を把握するために,海外での調査を行なった.エンターテイメント産業のなかで,コミックやアニメーション,キャラクター商品から構成されるマンガビジネスの海外進出に関しては,これまでに香港,シンガポール,台湾で調査を行なっている.今年度は,日本の芸能ビジネスに焦点を当て,中国の上海市で調査を実施した.その結果,1980年代から1990年代の東南アジアにおけるマンガビジネスと同様に,中国での海賊版問題は深刻であることが明らかになった.ソフトの供給側である目本にとって,海外市場での海賊版対策は,進出相手国が著作権条約に批准しているか否か,さらには著作権に関する当該国の認識の度合いによって異なる.中国では,正規版権契約にもとづく商品と,海賊版が同じ流通経路に存在し,これらの海購版に対して,日本企業からの具体的な措置はとられていない.日本企業では,中国市揚での海賊版対策よりも,むしろ日本の海賊版ソフトが中国市場から日本市場に入ってくることへの対策が急がれている. 研究成果は,まだ公表する段階には至っていないが,平成16年度には,大手芸能プロダクションの聴き取り調査および海外進出の現状についての調査をさらに進め,エンターテイメント・ソフト産業のビジネスシステムを明らかにしていく予定である.
|