2002 Fiscal Year Annual Research Report
知識創造プロセスとしての企業家活動の実証研究―国際地域間比較の視点から
Project/Area Number |
14730102
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Research Institution | Kagawa University |
Principal Investigator |
山田 仁一郎 香川大学, 経済学部, 助教授 (40325311)
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Keywords | 企業家活動 / 知識創造 / ソーシャルキャピタル(関係資本) / ネットワーク / 逆機能 / パートナーシップ / 社会企業家 / 産学官 |
Research Abstract |
本研究の目的は、知識創造パラダイムの観点から、企業家活動の研究枠組を構築する点にある。これまでの企業家活動に関する概念的研究は,規範的なノウハウ的な知識の形式化の集積に偏る傾向が強かった。これらのモデルの特徴は、起業プロセスを事業機会、経営資源、企業家のバランスの観点からとらえ、機能を革新に置いている点にある。これらの議論は,資源依存的視座に色濃く影響されており、実際に事業機会と経営資源が企業家ならびにその中核を担うチームによって、いかに新結合がなされるのかについては、十分に検討されてこなかった。 企業家が無から有として生じるわけではないように、その背景には既存の地域における企業間関係などの産学官のネットワークや創業者の出身組織やその顧客との関係などが存在する。これら個別的な組織環境としての地域を個人・組織・ネットワークという多層的なレベルは、文脈を具体化して分析するための仮説等が整備される必要がある。 本研究では、企業家活動の正機能としての革新や新結合のみならず、同時に伴うであろう様々なステークホルダーやセクション間のコンフリクト発生等の逆機能などにも着目し、ネットワーク理論の視座において広く着目されるソーシャルキャピタルの観点から仮説構築を行っている。これらの逆機能と正機能のバランスがとられるためには、創業者の持つパートナーシップの進化が重要になる。なお、これらの仮説を検証するために、定性的な国際比較事例研究とともにサーベイ調査も実施している。 昨今、着目されつつあるヴォランティアも含めた社会企業家活動論は、本来,支援者に見える研究者といった人々の活動の関係そのものが、広い意味での多元的な企業家活動観のなかでとらえ直されなければならない。従来、成功してきた企業家の事業創造過程には、多様な利害関係者に生じるギャップを解消し、社会的正当性を得るコンセンサスの獲得が含まれるのである。
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Research Products
(6 results)
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[Publications] Jin-ichiro Yamada: "Entrepreneurship as Knowledge and Social Capital Creation"Teramoto, Y. Eds. "Meso-Organization", Quorum Greenwood Publishing. (2003)
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[Publications] Jin-ichiro Yamada: "A Multi Dimensional View of Entrepreneurship : Towards a Research Agenda on Organization Emergence"Working Paper No.66, Institute of Economic Research, Kagawa University Japan. (2003)
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[Publications] 山田仁一郎: "地域企業の産業集積とイノベーション-東大阪地域の事例分析"『地域企業のイノベーションとネットワーク』金井一・・小島廣光編、白桃書房. (2003)
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[Publications] 山田仁一郎: "創業者のパートナーシップと人材育成"『新規開業研究会研究報告書-企業化活動に関する研究の進展および有効な支援システムの構築に向けて-』中小企業総合研究機構. (2003)
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[Publications] Jin-ichiro Yamada, Masaru Yamashita: "The Impact of a Producer-Director Partnership's Evolution : Producer's Role and Career in Japanese Film Industry"European Group of Organizaion Studies, 19^<th> Colloquium. (2003)
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[Publications] 山田仁一郎: "スコットランドにおける創造的産業の集積と背景"Working Paper No.64, Institute of Economic Research, Kagawa University, Japan. (2002)