2002 Fiscal Year Annual Research Report
経営者の裁量的会計手続き選択と資本市場の関係について-会計発生高を中心として-
Project/Area Number |
14730120
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
榎本 正博 静岡大学, 人文学部, 講師 (70313921)
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Keywords | 会計選択 / 利益マネジメント / 会計発生高 / 株式リターン |
Research Abstract |
本年度は、会計利益の構成要素である会計発生高及び非裁量的、裁量的会計発生高と将来株式リターンの関連を検証した。これは資本市場が、非裁量的会計発生高と裁量的会計発生高に含まれる次期以降の利益に関する予測能力を見通して、合理的にプライシングするかを分析するものである。なお非裁量的会計発生高は、経営者の裁量的な会計選択(利益マネジメント)の代理変数として取り扱っている。 分析の結果、まず非裁量的会計発生高と裁量的会計発生高では次期利益への持続性が異なっていた。そして、ヘッジ・ポートフォリオを用いた分析においても、将来株式リターンとの回帰を用いた分析においても、経営者の裁量的な会計選択(利益マネジメント)の代理変数である裁量的会計発生高は将来株式リターンと関連し、将来株式リターンに対する予測能力を有すると解釈できる証拠を得た。このことは、会計発生高と将来株式リターンとの関連の原因として経営者の裁量的な会計選択(利益マネジメント)の存在をあげた諸外国の先行研究と整合するものであり、また資本市場は、経営者の裁量的な会計選択(利益マネジメント)による裁量的会計発生高を正確に識別できず、裁量的会計発生高を含んだ会計利益を過大評価するといった先行研究とも首尾一貫する。他方、非裁量的会計発生高については将来株式リターンと関連する証拠としない証拠が混在しており、将来株式リターンとの関連について、現時点で資本市場が非裁量的会計発生高をどのように評価しているかという統一的な見解を示すことは困難であった。 また、会計発生高の各構成要素(売上債権、棚卸資産、仕入債務の変化など)をさらに非裁量的、裁量的要素に分割した分析では、それぞれの構成要素間で首尾一貫してない結果となっており、分割せずに集計した裁量的会計発生高に将来株式リターン予測能力があると解釈できるものであった。
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Research Products
(1 results)